酸素は131~133億年前の宇宙で急激に増えた

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宇宙誕生から5~7億年の時代に存在する銀河の中で酸素が急激に増えたことが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測結果から明らかになった。生命に欠かせない酸素の形成過程に関わる重要な成果だ。

【2023年11月16日 東京大学宇宙線研究所

138億年前にビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウム(および微量のリチウム)という軽い元素しか存在しなかった。その後、宇宙に誕生した星の内部で起こった核融合反応によって重い元素が合成され、それらが超新星爆発などで周囲の空間へとばら撒かれた。こうした元素合成が長きにわたり行われてきたことで、現在の宇宙には多様な物質が存在している。

生命の存在に欠かせない酸素も、誕生したての宇宙にはもちろんなかった。酸素が星の中で作られ、現在のように銀河の中に豊富に存在するようになるまでの過程は、十分には理解されていない。これを解明するには、より遠く(=過去の宇宙にある)の銀河に含まれるガスを観測し、過去の宇宙における酸素の存在比を調べる必要がある。ビッグバンから約20億年後に当たる120億年前の宇宙では、すでに銀河の中に豊富な酸素が存在することは判明していたが、それより過去の銀河についてはほとんど観測できていなかった。

国立天文台の中島王彦さんたちの研究チームはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)で得られた赤外線観測のデータを用いて、120億年以前の遠い銀河を138個発見し、それらの酸素の存在比を測定した。

138個の銀河のスペクトル
JWSTの観測データの解析で得られた138個の銀河の、赤外線スペクトルの一覧。上にいくほど遠くの(=過去の宇宙の)銀河に対応する。拡大図は1つの銀河の画像と一次元スペクトルの例。水素や酸素などの原子やイオンから放射される輝線の強さから、元素の存在比を調べることができる(提供:NASA, ESA, CSA, K. Nakajima et al.、以下同)

その結果、現在から131億年前までの銀河では、銀河の質量などに応じた量の酸素が存在することが示された。その一方で、131億年から133億年前の宇宙で見つかった銀河では、酸素の存在比が少ない可能性が非常に高いという結果も得られた。「宇宙の誕生から最初の5~7億年において、銀河における酸素の存在比が急激に増えたことがわかったのです」(中島さん)。

遠方の銀河の例/銀河に含まれる酸素の存在比の変遷
(左)酸素の存在比の欠乏が明確に示された131~133億年彼方の天体の一例(JWSTによる近赤外線画像)。(右)銀河に含まれる酸素の存在比(O/H)の変化を表すグラフ。同程度の質量などの性質を持つ銀河の平均で比較している。左端(赤方偏移0)の現在を基準に、131億年前(赤方偏移8付近)までの銀河では酸素の存在比に変化は見られないが、それ以前の銀河では酸素の存在比が半分程度と少なくなっている

「酸素が全く存在しなかった138億年前の時代から、豊富な酸素で生命が存在する現在の時代までの間に、酸素が作られ銀河に蓄えられていった過程は十分に理解されていませんでしたが、今回の成果により、131~133億年前という初期の宇宙で酸素の存在比が急激に高まったことが示されました。宇宙で初めて誕生した生命は、これまでの予想よりも早い時代だったのかもしれません」(東京大学宇宙線研究所・国立天文台 大内正己さん)。