銀河円盤が二層構造となる道筋

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遠方の円盤銀河の観測で、薄い円盤と厚い円盤という二層円盤構造が見つかった。遠方銀河で同定されたのは初めてのことで、厚い一層円盤構造の内側に薄い円盤が形成されて二層構造へ進化する過程などが明らかになった。

【2025年7月4日 東北大学

天の川銀河を含めた近傍宇宙に存在する円盤銀河には、若い星からなる薄い円盤と、年老いた星からなる厚い円盤の二層構造が見られる。このような層構造が、いつ、どのように形成されたのかはこれまでわかっておらず、観測能力の制限のため遠方銀河に二層構造があるのかどうかもわかっていなかった。

円盤銀河の模式図
円盤銀河の模式図

豪・オーストラリア国立大学の津久井崇史さん(現・東北大学)を中心とする研究チームは、高い分解能と感度を持つジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測データを用いて、円盤を真横から観測できる111個の銀河を対象に星の分布を詳細に解析した。

その結果、13億年前から100億年前に相当する44個の遠方銀河で、薄い円盤と厚い円盤からなる二層構造が存在することが初めて同定された。さらに、宇宙初期では厚い一層構造を持った銀河が多く、宇宙後期に二層構造を持った円盤が多くなることもわかった。最初に厚い円盤が形成され、その内側に薄い円盤が形成されるという銀河進化の過程を示唆するものとみられる。

「JWSTの高い解像度と近赤外線波長におけるユニークな観測能力を用いると、厚い円盤内の暗い年老いた星を見通すことができます。そのおかげで、銀河の二層構造を同定でき、2つの円盤の厚みを別々に計測できました」(津久井さん)。

観測された銀河
(上)二層円盤構造を持つ銀河、(下)一層円盤構造の銀河。各パネル右下の数値は赤方偏移(値が大きい銀河ほど遠い)(提供:NASA, ESA, CSA, T. Tsukui (Australian National University))

解析によると、薄い円盤の形成開始の時期は、大質量の銀河では約80億年前、小質量の銀河では約40億年前と推定される。つまり、銀河の質量が大きいほど薄い円盤を早く形成する傾向があるようだ。天の川銀河と同程度の質量を持つ銀河で形成された薄い円盤の年代は、天の川銀河の星の年齢から推定される薄い円盤の形成開始年代である80~90億年前とおおむね一致している。

続いて研究チームは、円盤の星の分布構造と、アルマ望遠鏡などで測定された星の材料であるガスの運動とを比較して、円盤の進化過程の物理的背景を調べ、次のような形成シナリオと整合的であることを確認した。

  • 初期宇宙では、ガス量が多く乱流の強い円盤が形成される。
  • このような環境下で活発な星形成が起こり、厚い円盤が形成される。
  • 星円盤の形成によってガス円盤が安定化し、乱流が次第に減少する。
  • 結果として、より薄い円盤が、厚い円盤の内側に形成される。
  • 銀河質量が大きいほど、ガスから星への変換効率が高く、薄い円盤の形成が早まる。

今後は遠方銀河の星の運動や年齢などが測定され、近傍銀河の詳細な測定結果との比較が進展すると期待される。異なる手法で得られた結果の比較研究によって、宇宙初期の円盤銀河から現在の天の川銀河に至るまでの形成過程の定量的な進化像が、より明瞭に描き出されるだろう。

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