JWSTとアルマ望遠鏡のタッグで、最遠方の原始銀河団をキャッチ

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡が131億光年彼方の原始銀河団を観測し、銀河が密集したコア領域で急速に銀河が成長する兆候がとらえられた。シミュレーションでは数千万年以内に銀河が合体し大きな銀河となることも示された。

【2023年9月27日 アルマ望遠鏡

地球に比較的近い銀河の観測から、銀河同士が密集した環境のほうが、個々の星の誕生と死のサイクルが急速に進むことが知られている。この「環境効果」が宇宙の歴史のいつごろから存在したのかは、よくわかっていない。それを知るには、宇宙が誕生して間もないころに存在した銀河の集団「原始銀河団」を観測する必要がある。

近傍の銀河団には100個程度以上の銀河が含まれるが、100億光年以上彼方に存在する原始銀河団では10個程度の銀河が集まっている。遠方にある天体はそれだけ昔の宇宙を観測していることになるので、遠い原始銀河団を観測すれば宇宙が若いころの様子を知る手がかりが得られる。ただし、遠い天体からの光や電波の観測には、高い感度と空間分解能が求められる。

筑波大学の橋本拓也さんとスペイン宇宙生物学センターのJavier Álvarez-Márquezさんたちの研究チームは、高い感度と空間分解能を持つジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)とアルマ望遠鏡を用いて、ちょうこくしつ座の方向に存在する原始銀河団「A2744-z7p9OD」を観測した。注目したのは、原始銀河団の中で銀河がとくに密集している「コア領域」だ。

橋本さんたちはまずJWSTの赤外線分光器「NIRSpec」でスペクトル観測を行い、その結果からコア領域に存在する銀河の赤方偏移を7.88と測定した。最新の宇宙論パラメーターで計算すると、距離は131.4億光年となる。

次にアルマ望遠鏡で観測したデータを解析したところ、複数の銀河から塵の出す電波が検出された。これほど遠方に位置する原始銀河団としては、塵が検出された初の例である。塵は銀河を構成する重い星々が終末期に起こす超新星爆発で供給され、新しい星の材料になると考えられている。この領域で多量の塵が検出されたことは、銀河内の第1世代の星の多くがすでに一生を終えており、銀河の成長が進んでいることを示唆するものだ。

電離酸素が放つ光の分布と塵が放つ電波の分布
(背景)JWSTの観測による、原始銀河団A2744-z7p9OD中のコア領域に存在する光の強度。(左)NIRSpecによる、電離酸素が放つ光の分布を等高線で表示。4つの銀河の存在が見える。(右)アルマ望遠鏡による、塵の放つ電波の分布を等高線で表示。4つ中3つの銀河に塵の放射が認められる(提供:JWST (NASA, ESA, CSA), ALMA (ESO/NOAJ/NRAO), T. Hashimoto et al.)

「同じ原始銀河団のうち、コア領域以外の密集していない銀河では、塵は検出されませんでした。これは、多くの銀河が狭い領域に集まることで銀河の成長が急速に進んでいることを示しており、138億年前の宇宙誕生からわずか7億年余りの時代に環境効果が存在していたと考えられます」(スペイン宇宙生物学センター Luis Colinaさん)。

研究チームはさらに、コア領域に密集した4つ銀河の形成と進化について、銀河形成のシミュレーションを行って理論的に検証した。すると、A2744-z7p9ODと同様に、宇宙誕生から約6.8億年後にガスの粒子が密集した領域が現れ、狭い領域に密集した4つの銀河が形成された。また、数千万年程度と比較的短い時間で銀河が合体し、より大きな銀河に進化することも示された。

シミュレーションによるA2744-z7p9ODの成長予想
シミュレーションによるA2744-z7p9ODの成長予想。(a)宇宙年齢6.89億年における、A2744-z7p9ODに似た領域のガスの密度の様子。(b)は(a)のコア領域の拡大図。JWSTで観測された領域に相当する。濃淡は酸素イオンの光の分布を示す。(b)から(d)では、時間経過に伴って銀河が合体を繰り返し、より大きな天体へと進化する様子を表す(提供:T. Hashimoto et al.)

「今回、非常に強力であることが証明されたJWSTとアルマ望遠鏡のタッグによる観測を、今後より多くの原始銀河団に適用して、銀河の成長メカニズムを明らかにして、宇宙におけるわたしたちのルーツに迫ります」(Álvarez-Márquezさん)。

コア領域の想像図と将来の姿
(左)原始銀河団A2744-z7p9ODのコア領域の想像図。(右)数千万年後のコア領域の想像図。複数の銀河が合体してできた大きな銀河が見られる(提供:国立天文台)