「星座線のつなぎ方」を巡る議論、難航中
【2022年4月1日 国際天文学連盟】
全天の星座を現行の88個とすることが決まったのは100年前、1922年のことだ。その星座について正式に定義されているのは名前(学名)と領域だけであり、領域内での星のつなぎ方(星座線)はこれまで自由とされていた。
ところが国や文化圏、星座早見盤のメーカーや出版社によって採用する星座線がバラバラであるため、「どれに従えばいいかわからない」「教科書と違う線を引いて誤答にされた」「慣れ親しんだ星座の形が歪められているのを見てショックを受けた」などの声が挙がっていた。
そこで、国際天文学連盟(International Astronomical League; IAL)では星座線策定ワーキンググループ(議長:ホークス・エイプリルさん)を発足させて、星のつなぎ方を統一させるべく議論を開始した。だが、話し合いは難航している。
大きな星座ほど、つなぎ方が多様になりがちだ。くじら座では、海の化け物の胴体や手足のつなぎ方を巡って意見が割れている。さらに、「これを機に、潮を吹く鯨の形に見えるようにしよう」という急進派も加わり、議論が複雑になってしまった。
くじら座。上は「ステラナビゲータ」で採用されている星座線、下は「潮を吹く右向きの鯨」に見えるような星座線の例
単純な星座でも問題が発生している。こいぬ座はプロキオンとゴメイサを一直線につなぐだけで済むかに思われたが、天文シミュレーションソフト「ステラナビゲータ」の場合は途中の6等星HIP 37031をつなぐため、線がわずかに折れていることが発覚した。この件に関してソフト開発元のアストロアーシに見解を問い合わせているが、期日までに回答はなかった。
こいぬ座。HIP 37031(矢印の先の星)を経由しているため星座線は一直線ではない。ちなみに、やはり棒一本で表されることが多いりょうけん座の星座線は2つの星だけをつないだ一直線となっている
かみのけ座を巡っては、モデルとなったエジプト王妃ベレニケ2世の髪がストレートだったかウェーブだったかで議論が紛糾している。「星座線は恒星をつなぐ直線のみとする」との合意がなされていたにも関わらず、ウェーブ派は「かみのけ座銀河団の銀河を使えば綺麗な曲線が描ける」と意見を曲げない(なお「恒星のみをつなぐ」とする場合、ω星団を通ることが多いケンタウルス座の星座線にも大きな影響が及ぶ)。
2020年に「頭」と「尾」の統合が検討されたへび座に関する議論も、もつれにもつれた。一時は、へび座とへびつかい座で独立に線を引き、両者を重ねるという案に決まりかけたが、一人の委員が「異なる星座同士は線でつなぐべきではない」と藪蛇な発言をしたため、ペガスス座(アンドロメダ座とつながる)、ぎょしゃ座(おうし座とつながる)、みずがめ座(みなみのうお座とつながる)の扱いにまで議論が飛び火している。かつて一つの星座だったりゅうこつ座・とも座・ほ座が言及されるに至り、話し合いは暗礁に乗り上げた。
星のつなぎ方を巡る見解の相違から仲違いする関係者も多く、国際天文学連盟は発足以来最大の危機にあるのではともささやかれている。エイプリルさんは「多少の違いがあっても、それをありのままに受け入れてこそ、人と人はつながれるのだと信じているのですが」と、ため息交じりに語っている。
この記事は2022年4月1日にエイプリルフール記事として公開したものです。
〈関連リンク〉
- IAUGA 2021 第31回国際天文学連合総会
- アストロアーツ 星空ガイド:天文の基礎知識:星座
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