初期太陽系における地球型惑星の材料物質の進化を解明

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隕石の分析研究から、地球型惑星などの化学組成の違いは、必ずしも始原的隕石の組成を反映したものではなく、原始太陽系円盤において材料物質が集積した場の塵とガスの組成で決定づけられていることが示された。

【2021年5月31日 岡山大学

太陽系の惑星は、約46億年前にガスと塵からなる原始太陽系円盤から形成された。そのうち地球などの岩石惑星は、原始太陽系円盤の木星より内側で形成された非炭素質型物質を主な材料として形成されたことが、多くの始原的隕石の分析研究から示されている。とくに「エンスタタイト・コンドライト」と呼ばれる非炭素質型始原的隕石は、地球と月を形成した主要な材料物質と考えられている。

一方、太陽系形成後の約10万年後に形成されたユレイライト隕石の母天体に代表される一部の非炭素質型隕石と、炭素質コンドライト隕石母天体が混合した結果、地球型惑星が形成されたというモデルも提案されている。

しかし、これらのモデルでは、地球の主要な成分であるケイ素の同位体組成などが地球の値と一致しないという問題がある。また、地球の岩石層(マントルと地殻)に含まれるケイ素の存在比が、太陽系全体の存在比より低いことも説明できておらず、決め手となるようなモデルはなかった。

岡山大学惑星物質研究所の田中亮吏さんたちのチームはこの問題に取り組み、エンスタタイト・コンドライト中のコンドリュール(始原的隕石中の球形の物質)とユレイライト隕石について、酸素・ケイ素同位体組成の分析を実施した。

その結果、ユレイライト隕石が幅広い酸素同位体組成を有する一方で、ケイ素同位体は均質であることがわかった。これは、ユレイライト隕石母天体が集積した太陽系形成後の約10万年後には、原始太陽系円盤の内側には酸素同位体の不均質性が存在したものの、すでにケイ素同位体については均質化が達成されていた事を示している。

これに対してエンスタタイト・コンドライト中のコンドリュールは、地球、月、火星、および非炭素質型小惑星起源隕石と調和的な、幅広いケイ素同位体組成を示し、さらに、酸素同位体組成と緩やかな負の相関性を持つことが明らかになった。

エンスタタイト・コンドライト隕石に含まれるコンドリュールの酸素同位体比とケイ素同位体比の関係
エンスタタイト・コンドライト隕石に含まれるコンドリュールの酸素同位体比とケイ素同位体比の関係(赤丸)。横軸は酸素同位体の地球岩石とのずれ、縦軸はケイ素同位体の標準試料とのずれを表す。各天体の酸素およびケイ素同位体組成も示されている示す。青線は計算で求められた、原始太陽系円盤内でそれぞれのコンドリュールが形成された環境における、塵-ガスの混合物のマグネシウム/ケイ素比(提供:岡山大学リリース、以下同)

この関係性について田中さんたちは、「原始太陽系円盤から早期に形成した鉄とニッケルを主成分とする金属、およびマグネシウムとケイ素を主成分とするケイ酸塩鉱物によって構成される塵が、瞬間的な加熱によって蒸発し、その蒸発したガスと、溶融したケイ酸塩メルトとの反応によって形成された」ものと結論づけている。

この反応が生じた際の塵とガス全体のマグネシウム/ケイ素比、酸素・ケイ素同位体組成は、原始太陽系星雲内での塵/ガス比や、塵に含まれる金属/ケイ酸塩鉱物比によって決定づけられるものだ。つまり、惑星起源物質や微惑星の化学組成は、円盤内部でこれらの反応が生じた場の組成を反映しているものと考えられる。同時に、始原的隕石の組成が必ずしも惑星の化学組成をそのまま反映しているものではないことも示している。地球型惑星の化学組成について、再検討する必要性を示唆する成果となった。

微惑星形成モデルと今回の研究内容
(上)原始太陽系円盤の内側における微惑星形成モデル(Kruijer et al., 2017, PNAS, 114, 6712-6716 を改変)。太陽系形成から約100万年後までに、原始木星よりも内側の領域に非炭素質型物質が卓越していたとされる。(下)今回研究チームが提案したモデル。非炭素質型物質が卓越する領域で、急加熱され溶融したカンラン石に富むコンドリュール、蒸発した塵、初生ガスが反応することによってケイ素に富むコンドリュールが形成され、これらが集積して地球型惑星の起源となった微惑星が形成された

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