26光年の近距離に2つの手法で検出された地球型惑星

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地球から約26光年離れた赤色矮星グリーゼ486の周りに地球に近いサイズの惑星が見つかった。生命に適した環境ではないが、大気の研究に向いた惑星だと期待される。

【2021年3月12日 東京大学

太陽系外惑星の大半は、惑星が主星の前を通過する際の減光を検出する「トランジット法」か、惑星の重力によって主星に生じるぶれをとらえる「視線速度法(ドップラー法)」のどちらかで発見される。トランジット法を使えば惑星の大きさを見積もることができ、視線速度法なら惑星の質量を計算できるが、両方が適用できる系外惑星はあまり多くはない。今回見つかった惑星は2つの手法で検出され、おまけに太陽系に比較的近いという点で貴重な存在だ。

新たな系外惑星は、おとめ座の方向約26光年の距離にある赤色矮星「グリーゼ486(Gliese 486)」の周りで見つかっており、「グリーゼ486 b」という符号が与えられている。

最初に惑星の兆候をとらえたのはトランジット法を用いるNASAの系外惑星探査衛星「TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)」で、2020年3月18日から4月16日までの観測でグリーゼ486が周期的に暗くなっているのを検出した。ただし、恒星の周期的な減光は惑星以外の要因によっても起こる可能性があるので、惑星の存在を確定するには追加観測が欠かせない。

そこで、独・マックス・プランク天体物理研究所のTrifon Trifonovさんたちの国際研究チームは、スペイン・テネリフェ島テイデ観測所の1.52mカルロス・サンチェス望遠鏡に設置されている多色同時撮像カメラ「MuSCAT2」でグリーゼ486を観測した。MuSCAT2は東京大学大学院理学系研究科の成田憲保さんたちが系外惑星の発見確認観測のために開発したカメラで、恒星の減光を複数の波長で同時にとらえることにより、その星を隠しているのが別の恒星ではなく惑星であることを効率的に確認できる。グリーゼ486の減光は可視光線から赤外線の全波長で一致したので、これが確かに惑星によるものだと確認された。

26光年の距離にあるグリーゼ486 bは、トランジット法で見つかった系外惑星としては3番目に太陽系に近い。

グリーゼ486の明るさの変化
2020年5月12日にMuSCAT2で観測したグリーゼ486の明るさの変化。左から、波長400-550nm、550-700nm、720-820nm、820-920nmの観測結果。横軸はトランジットの中心時刻を原点とした時間、縦軸はトランジットをしていない時の明るさを1とした相対的な明るさ。トランジットによって、グリーゼ486が約1時間の間に0.1~0.2%ほど暗くなったことがわかる(提供:東京大学リリース)

グリーゼ486 bは視線速度法からも検出されている。スペインのカラーアルト天文台の3.5m望遠鏡に設置された視線速度測定装置「CARMENES」は、2016年からグリーゼ486のデータを取り続けていた。さらに2020年5月から6月にかけて、米・ハワイのジェミニ北望遠鏡の視線速度測定装置「MAROON-X」も追加の観測を実施した。

2つの検出法によって、惑星グリーゼ486 bの半径が地球の約1.3倍、質量が約2.8倍だとわかった。岩石を主体とした地球型惑星であると考えられる。一方、公転周期はわずか1.467日で恒星のすぐ近くを回っており、推定表面温度は摂氏400度以上だ。そのため、生命がいる可能性は低い。

一方、公転周期が短いので恒星と惑星は頻繁に隠し合うことになる。また温度が比較的高いため、大気が存在する場合はその成分に応じた波長の光を発したり吸収したりする傾向が現れやすい。さらに太陽系に近いことも踏まえれば、グリーゼ486 bはトランジット法の応用で大気の成分を調べるのに向いているだろうと研究チームは考えている。

グリーゼ486 bの表面の想像図
グリーゼ486 bの表面の想像図。摂氏400度ほどと金星のような灼熱の世界であることから、あちこちに溶岩が川のように流れているかもしれない(提供:RenderArea

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