史上最遠で見つかった太陽系天体「ファーファーアウト」

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すばる望遠鏡によって、太陽から約200億km離れたところに小天体が発見された。発見時の距離としては観測史上最遠の太陽系天体である。

【2021年2月17日 すばる望遠鏡

「遙か遙か彼方」といった意味合いの「ファーファーアウト(Farfarout)」という愛称が付けられたこの天体「2018 AG37」は、米・カーネギー研究所、ハワイ大学、北アリゾナ大学の研究者たちのチームが2018年1月にすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC; ハイパー・シュプリーム・カム)」を使用した観測で発見したものだ。その後、ジェミニ天文台のジェミニ北望遠鏡と、チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡で追観測が行われ、約800年周期の公転軌道が求められた。

この天体に正式な名称が付けられるのは、軌道がさらに精度良く求められてからとなる。しかし、あまりに遠い天体であり、動きも遅いことから、さらに数年間にわたる観測が必要だという。

ファーファーアウトの発見画像
すばる望遠鏡によるファーファーアウト(2018 AG37)の発見画像。2018年1月15日と1月16日に取得された2枚の画像を合わせることで天体の動きが見てとれる(提供:Scott S. Sheppard)

これまで太陽系で最も遠くで発見された天体「2018 VG18」は、発見当時の太陽からの距離が約120au(太陽から地球までの距離の120倍、約180億km)だった。2018 VG18も今回と同じ研究チームが発見した天体であり、「遙か彼方」を意味する「ファーアウト(Farout)」という愛称が付けられている(参照:「太陽系の観測史上最も遠方で発見された小天体「ファーアウト」)。これを超えた「ファーファーアウト」は、発見時に太陽から約132au(約198億km)と、当時の太陽・冥王星間の約4倍に相当する距離(冥王星の軌道長半径の約3.3倍)に位置していた。発見から3年経った現在、距離はわずかに遠ざかったが見かけの位置はほとんど変わっておらず、やまねこ座の領域にある。

ファーファーアウトの軌道は非常に細長く、遠日点(太陽から最も離れた位置)は約175au(260億km)だが、近日点(太陽から最も近い位置)は海王星軌道よりも内側の約27au(40億km)だ。「ファーファーアウトは海王星に近づきすぎたために、太陽系の外側にはじき出されたのでしょう。この軌道は、海王星の形成と進化を理解するうえでも興味深いです。軌道が交差しているので、今後もファーファーアウトと海王星が大きな重力相互作用をする機会があるでしょう」(米・北アリゾナ大学 Chad Trujilloさん)。

研究チームは、ファーファーアウトが氷を多く含む天体だと仮定して、直径は約400kmと見積もっている。これは自身の重力で丸くなり準惑星と認められるサイズの下限に近い。

「ファーファーアウトの発見は、太陽系外縁部の全体像をとらえ、その遠方を探査する人類の能力向上を示しています。大望遠鏡に取り付けられた巨大デジタルカメラによって、ファーファーアウトのような遠方の天体を効率的に見つけることが可能になりました。ファーファーアウトは、太陽系の果てに存在する天体のなかでは氷山の一角にすぎないでしょう」(米・カーネギー研究所 Scott Sheppardさん)。

太陽系内の主な天体までの距離
太陽系内の主な天体までの距離の図。左端あたりに水星や地球、左から1/3あたりに冥王星やハウメア、右から1/3あたりにセドナやエリス、右端あたりにファーアウトやファーファーアウトがある(軌道長半径と発見時の距離が混在しているので、単純な比較にはならない)。画像クリックで表示拡大(提供:NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva)

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