市民天文学とAIで渦巻銀河とリング銀河を大量発見

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国立天文台の市民天文学プロジェクト「GALAXY CRUISE」の成果を活用したAIによって、すばる望遠鏡の撮影画像から新たに40万個を超える渦巻銀河とリング銀河が検出された。

【2024年3月21日 すばる望遠鏡

今から約100年前、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、夜空の銀河が私たちの天の川銀河の外にある天体であることを明らかにし、「渦巻銀河」「楕円銀河」といった形態に基づく銀河の分類(ハッブル分類)を確立した。

銀河には渦巻銀河や楕円銀河以外にも様々なタイプがあり、どのようにして多様な銀河が生まれるのか、また銀河同士の相互作用や銀河中心に存在する超大質量ブラックホールが銀河自体とどう関わっているのか、といった研究が長年行われている。

近年ではAIによって銀河を効率良く分類することが可能になっているが、人間の目による分類も依然として重要だ。その代表例が、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC; ハイパー・シュプリーム・カム)」で撮影された大量の画像データを使った市民天文学プログラム「GALAXY CRUISE(ギャラクシークルーズ)」である。

GALAXY CRUISEでは、HSCで撮影された高品質の銀河画像を、1万人を超える市民天文学者が目で分類することで、精度の高い形態分類データができあがっている。とくに、銀河同士の衝突・合体などで形成される「リング銀河」など、珍しい銀河が正確に分類されており、きわめて貴重なデータベースだ。

今回、早稲田大学高等研究所の嶋川里澄さんたちの研究チームは、GALAXY CRUISEで集められた約2万天体の銀河分類データをAIに学習させ、銀河の渦巻き構造とリング構造を検出できるAIプログラムを構築した。

AIに画像の分類などを学習させる際の大きなハードルが、「何の画像か」という「正解」の情報をラベル付けした高品質の訓練データ(教師データ)を大量に用意することだ。例えばGoogleでは、Webの認証システムで「自転車」や「橋」などの画像をユーザーに選ばせるしくみを利用し、AI研究用のラベル付き画像データを大量に入手している。嶋川さんたちは、市民科学者が人力で分類した大規模な銀河画像セットを教師データとすることで、高精度の銀河分類AIを実現した。

嶋川さんたちはこのAIを使い、HSCによる大規模サーベイ「HSC-SSP」の第3期データの画像から、新たにおよそ70万個の銀河を自動分類することに成功した。今回分類したデータには、約40万個の渦巻銀河と3万個を超えるリング銀河が含まれている。とくに、銀河全体の5%にも満たないリング銀河を大量に検出できたことは、情報の少ないリング構造の成り立ちや性質を今後明らかにする上で非常に重要だ。

AIが検出したリング銀河
(左)GALAXY CRUISEのイメージイラスト、(右)GALAXY CRUISEのデータで学習させたAIによって新たに検出されたリング銀河の例。画像クリックで表示拡大(提供:すばる望遠鏡

嶋川さんたちは今回新たに分類されたデータから、リング銀河が、成熟した星形成銀河(主に渦巻銀河)と、星形成を終えて衰えつつある銀河(主に楕円銀河など)の中間的な性質を持つ傾向があることを発見した。この傾向は、スーパーコンピューターを用いた最新の理論予測とも合致している。

研究チームは今回の成果を、科学コミュニティに市民が参加する意義を改めて認識させるものだと評価し、市民天文学者とすばる望遠鏡が協力して切り拓く、未来の天文学研究に向けた新たな一歩になるだろうと期待している。

「AIを使った分類は70万天体でも1時間にも満たないですが、GALAXY CRUISEが2年以上かけて集めた分類データがなければ本研究は実現しておらず、当プロジェクトに参加された市民天文学者の皆様には感謝の念に堪えません。これから市民天文学者との協働研究が、国内でさらに盛り上がってくれば非常に面白いと思います」(嶋川さん)。

今回の研究成果の紹介動画「市民天文学者とAIの協働で渦巻銀河とリング銀河の大規模検出に成功」(提供:すばる望遠鏡)

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