73億光年彼方の超銀河団の全貌

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すばる望遠鏡などの観測によって約73億光年彼方に存在する超銀河団の全貌がとらえられ、この超銀河団の領域が従来の観測結果の2倍以上も大きいことが判明した。

【2019年10月28日 すばる望遠鏡ジェミニ天文台

宇宙では銀河の分布は一様ではなく、銀河団のように銀河が密集した領域もあれば、反対に銀河がほとんど存在しない領域もある。網の目状に広がる銀河分布の大規模構造と銀河の成り立ちには密接な関わりがあると考えられており、大規模構造の中で銀河が誕生し進化していく様子を調べることは重要な研究テーマの一つである。

宇宙の大規模構造や銀河の成り立ちを理解するためには、遠方の(古い)宇宙を広範囲にわたって観測することが有効な手段となる。すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を用いた「すばる望遠鏡戦略枠サーベイ」でも、そのような観測が行われてきた。

国立天文台の林将央さんたちの研究チームは同サーベイのデータを用いて、ヘルクレス座の方向約73億光年彼方の超銀河団「CL1604」の方向に存在する銀河の分布を調べた。CL1604はこれまでに知られている数少ない遠方宇宙の超銀河団の一つで、3つの銀河団と少なくとも5つの銀河群から構成されており、約8000万光年の領域に広がると考えられてきた。

林さんたちは銀河の色に基づく「測光的赤方偏移」の手法によって個々の天体の距離を測定し、CL1604と距離が同程度の銀河を選び出した。すると、既に知られていたCL1604領域の北側と南側にも銀河の密集した領域が存在し、少なくとも1000天体以上の銀河の集団からなる大規模な構造が南北方向に広がっていることが明らかになった。

超銀河団「CL1604」の分布図
超銀河団「CL1604」の分布図。(左)奥行方向から約73億光年付近のみを切り出した2次元分布図。中央の白の実線が先行研究によって既知であった領域、黄色の実線が本研究で分光確認された4つの超銀河団領域。(右)3次元分布図。画像クリックで表示拡大(提供:国立天文台、以下同)

さらに、すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡で分光観測を行い、計137個の銀河の距離を精密に測定したところ、銀河が奥行き方向にも群れをなしていることが確かめられ、3次元的にも複数の銀河団の集団であることが確認された。

銀河の赤方偏移の分布
分光観測によって同定された銀河の赤方偏移(奥行方向の距離)の分布。銀河団であることを示す分布のピークごとに北側の銀河団候補の1領域(N1)と南側の3領域(S1~S3)を色分けしたもの。同じ色のヒストグラムは、天球面上の場所によらず同等の赤方偏移に存在する銀河団であることを表す

分光観測で得られた銀河のスペクトルからは、銀河の星形成活動の歴史や銀河内の恒星の年齢を推定することもできる。解析の結果、CL1604内にある銀河は約20億年より古い年齢の恒星からなり、どの銀河でも恒星の年齢が同等であることがわかった。約1.6億光年にもわたる非常に大きなスケールで銀河が同時期に形成されたことを示唆している。

天の川銀河はおとめ座銀河団に属しており、おとめ座銀河団はさらに巨大な「ラニアケア超銀河団」という構造の一部であることがわかっている(参照:「直径5億光年、天の川銀河が属する新たな超銀河団「ラニアケア」」)。今回発見された73億光年彼方の巨大構造は、ラニアケア超銀河団のような大構造の祖先の姿かもしれない。

「サーベイ観測領域の全域に関する研究を行うことで、未知の大規模構造が宇宙の様々な時代で次々と見つかってくることが期待されます。その大規模構造をなす銀河の性質を調べ、宇宙の大規模構造の成長と銀河の成り立ちのさらなる解明を目指します」(林さん)。

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