リュウグウの西半球の形状は高速回転で作られた
【2019年5月16日 JAXAはやぶさ2プロジェクト】
探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウに到着し、鮮明にその姿をとらえたことで、リュウグウはそろばんの珠のような形状をしていることが明らかになっている。探査機「オシリス・レックス」がとらえた小惑星ベンヌの姿も、似たような形状をしている。
リュウグウの3Dモデルと地名。日本プラネタリウム協議会のウェブページでは、マウスで操作してリュウグウの全体像を見ることができる(提供:JAXA/会津大/神戸大/東京大/高知大/立教大/名古屋大/千葉工大/明治大/産総研)
この形がどのように作られたのかについては、様々な仮説が考えられており、そのなかでも高速回転で作られたとする説が有力だ(参照:「リュウグウにはやはり水があった」記事の「リュウグウの形・構造」の項)。
米・オーバーン大学の平林正稔さんたちの研究チームは、この形状の詳しい起源を解明するうえで、一見すると回転軸に対して大体軸対称でありながら厳密にはそうではないという点に着目した。
リュウグウの表面は「『トコヨ』フォッサ」と「『ホウライ』フォッサ」という地溝を境に、西と東の表層が大きく異なっている。通称「西バルジ」と呼ばれている西の領域は、東の領域と比べてクレータの数が少なく、表面が滑らかだ。また、赤道稜線である「リュウジン尾根」は、非常に傾斜角が急になっている。
様々な経度から見たリュウグウ。西経90度方向(d)から見るとリュウジン尾根の稜線の角度が鋭くなっていることがわかる(提供:Hirabayashi, M.+, 2019)
構造計算によって、リュウグウの西バルジがどのように形成されたかを解析したところ、おそらく地滑りまたは内部構造変化といった構造上の変化によって形成された可能性が示された。これは、リュウグウが過去に高速回転していたという仮説を支持する結果である。
今回の結果について平林さんは、成果というよりも今後の研究の発端となるものだと考えており、そろばんの珠が宇宙の中でどのように形成されたのかに関する研究の、さらなる進展と結果を楽しみにしているとのことだ。
〈参照〉
- JAXAはやぶさ2プロジェクト:リュウグウの西半球の形状は過去の高速回転で作られた!
- The Astrophysical Journal Letters:The Western Bulge of 162173 Ryugu Formed as a Result of a Rotationally Driven Deformation Process 論文
- 宇宙航空研究開発機構:小惑星探査機「はやぶさ2」観測成果論文の『Science』誌(2019年3月20日)掲載に伴う解説
- Science:Hayabusa2 arrives at the carbonaceous asteroid 162173 Ryugu - A spinning top - shaped rubble pile 「リュウグウのコマ型は過去の高速自転で形成された」に関する論文
〈関連リンク〉
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