水星の「棒磁石」のずれをシミュレーション研究で解明

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水星内部のダイナモ作用のシミュレーション研究から、水星磁場の「棒磁石」が中心から北にずれている理由が解明された。中心核内部の磁場が自己調整機構によって対流をコントロールすることで、自発的に生成・維持されているという。

【2019年1月22日 九州大学

2008年、NASAの水星探査機「メッセンジャー」の観測により、水星が地球のような固有磁場を持つことが明らかになった。大規模な固有磁場は、水星内部の中心核のダイナモ作用によって磁場が作られている証拠となるため、この発見は水星の起源および進化を明らかにするうえで重要な成果であった。

さらにその後の観測から、水星磁場の双極子(棒磁石)が北に大きくずれていることもわかった。地球磁場では、双極子はほぼ地球の中心にある。この双極子のずれはメッセンジャーの観測成果の中でも屈指の重要な発見といわれるが、その原因は一切明らかになっていない。

地球と水星内部の仮想的な棒磁石の位置
地球と水星内部の仮想的な棒磁石の位置。地球の磁場は地球中心に置いた棒磁石でよく表現できるが、水星では棒磁石を約500km(水星半径の5分の1)北にずらさないと観測結果を説明できない(提供:九州大学プレスリリース)

九州大学の高橋太さん、東京大学地震研究所の清水久芳准さん、東京工業大学理学院の綱川秀夫さんたちの共同研究グループは、水星中心核の熱化学的状態を模した最新の実験や理論計算の結果をもとに、新たな水星内部構造モデルを作成した。このモデルを「ダイナモモデル」に組み入れ、水星中心核の対流とそれに伴うダイナモ作用(天体が大規模な磁場を生成・維持するためのメカニズム)を数値的にシミュレーションしたところ、特定のモデルについて、北にずれる双極子をはじめとする水星磁場の特徴を全て再現するシミュレーション結果が得られた。

さらに詳細な解析の結果、中心核の対流で作られた磁場が、電磁場中で運動する荷電粒子、電流に作用する力である「ローレンツ力」を通じて対流構造を調節することによって、北にずれた双極子を自発的に生成・維持していることが明らかになった。研究グループでは、これを「自己調整」(self-regulation)と命名した。

磁場による自己調整機構の効果
自己調整が働く場合(上)と磁場によって自己調整が働かない場合(下)の、水星表面での磁場動径成分の分布図。赤色が内向き、青色が外向きの磁場。磁場により自己調整機構がオフになると形態が維持されず、全く異なる磁場構造になることがわかる

地球磁場と水星磁場の相異を明らかにすることは、水星のみならず地球を理解することにもつながる重要な研究テーマだ。昨年10月には、日欧協同の水星探査計画「ベピコロンボ」によって、日本の水星磁気圏探査機「みお」(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)が打ち上げられ、現在水星へ向かっている。今回の研究成果と、将来の「みお」の観測による詳細な磁場データによって、水星ダイナモのメカニズムが明らかになり、水星の起源・進化に関する理解が飛躍的に深まることが期待される。

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