「はやぶさ2」リュウグウ着陸は来年に延期

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「はやぶさ2」の運用チームは、今月下旬に予定されていた小惑星リュウグウへの最初の着陸を来年1月以降に延期すると発表した。

【2018年10月15日 JAXA

「はやぶさ2」プロジェクトチームは延期の理由として、着地とサンプル採取を成功させるためには、リュウグウ表面の厳しい凹凸地形を克服する必要があり、また50mより低い高度で「はやぶさ2」の航法誘導や距離計測が正常に行えるかどうかを見極める必要があるためとしている。

「はやぶさ2」はこれまでに6回の降下運用を行い、10月3日に行われた着陸機「MASCOT」の分離では高度51mまで降下した。こうした運用のたびに、着地候補地点の画像を低い高度から撮影し、着地に支障のある高さ50cm以上の岩塊の分布などを調べてきた。

これまでの分析で、リュウグウの表面は「平坦な砂地に岩塊が点在している」という状況ではなく、大小の岩石が集まってできた「岩しかない」地形であることがわかってきた。このため、当初想定していた「1辺100mの着陸候補エリアの中央を狙って降下すれば、エリア内のどこかに降りられる」という誘導精度では安全な着陸は望めないという。

リュウグウ表面の地形
着陸候補地点の地形。L08、L07、M04が着陸候補地点でそれぞれ1辺は100m。右の画像の右上にある図が着地の「安全度」を表し、青や紫の場所ほど、地形の凹凸に機体がぶつからない安全な場所であることを示す。画像クリックで表示拡大(提供:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研、以下同)

これまでの運用で、高度約50mまでは、±10m程度の精度で「はやぶさ2」を目標位置に誘導できることを確認できている。そこで、この誘導精度を高度0mまでなるべく保ち、凹凸が50cm以内の平らな地形が直径20mくらいの広さで存在している場所への着陸を目指すことになった。最も条件が良いとされる着陸候補地点「L08」のエリア内で、そうした直径20m規模の平坦地はかろうじて3か所ほど確認されており、次の着陸リハーサルではこの中で最も北にある「L08-B」という場所を狙って高度25m程度まで降下する予定だ。

L08-B
2018年10月3日の「MASCOT」分離の際に高度約1.9kmから撮影された「L08」の周辺。赤い丸印が、直径20mの平坦な場所の一つ「L08-B」を示す。画像の1ピクセルが20cmに相当する

また、「はやぶさ2」ではリュウグウ表面の地形の特徴を検出して自律的に降下を行うが、これまで降りた実績のある高度50mよりもさらに低い場所でこの手法が正常に働くかどうかも今後の着陸リハーサルで確認する。あわせて、高度40m以下で表面の凹凸を計測する「LRF(レーザー距離計)」の動作確認も行う。本番の降下で目印とする「ターゲットマーカー」も、リハーサルで実際に投下してテストすることになった。

10月11日の記者説明会で発表された新たなスケジュールは以下の通りだ。

  • 10月14〜15日:第1回着陸のリハーサル(2回目)「TD1-R1-A」
  • 10月24〜25日:第1回着陸のリハーサル(3回目)「TD1-R3」
  • 11月下旬〜12月:合運用
  • 2019年1月以降:第1回着陸の本番「TD1」

11月下旬から12月までは、リュウグウが地球から見て太陽の裏側に位置する「合」の期間になり、「はやぶさ2」との通信が行えないため、高度100km以上まで「はやぶさ2」を上昇させて待機させる「合運用」の期間となる。

今月に予定されている2回のリハーサル結果やそこで撮影した画像をもとに、合運用の間に分析・検討を行い、来年1月以降に最初の着陸を目指す。来年11〜12月にリュウグウを出発するというスケジュールには変更はないとのことだ。

「はやぶさ2」プロジェクトマネージャーの津田雄一さんは、「10月の2回のリハーサルの結果を評価して、一度立ち止まるというか、長考する期間が必要だと思っています。これまでに知られている小惑星には必ず平坦な場所があり、小惑星とはそういう天体だと思っていましたが、リュウグウは徹底的にでこぼこしていて平坦な場所が一つもありません。探査機を着陸させるという意味では意地悪きわまりない小惑星ですが、新しい世界を探査するミッションなので、何もかも予定通りに行くとは思っていませんでした。いよいよリュウグウが牙をむいてきたなと思っていますが、これにどう立ち向かおうかとチーム全体の意気は上がっています」と述べている。

(文:中野太郎)