斜めから撮影されたリュウグウの南半球
【2018年9月7日 ファン!ファン!JAXA!】
JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」は現在、小惑星「リュウグウ」と地球を結ぶ直線上に設定された「ホームポジション」(リュウグウからの距離20km)で観測を行っている。8月18日からはホームポジションを一時的に離れて、リュウグウを斜めから観測する「BOX-B運用」が初めて行われた。
このBOX-B運用でリュウグウの南半球側をとらえた画像が公開された。リュウグウの南極付近には差し渡し約130mの大きな白っぽい岩塊があり、これまでよく見えていなかったこの岩塊の上部の様子が初めてとらえられている。
8月24日に撮影されたリュウグウの南半球。ホームポジションから南に9km離れた位置から撮影。画面左上がリュウグウの北極、右下が南極方向。リュウグウまでの距離は約22km(提供:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研)
「はやぶさ2」はその後、8月31日にはリュウグウの東側(夕方側)にやはり9km移動し、ここでも観測を行った。
「はやぶさ2」のBOX-B運用。地球から見て直角三角形となるコースを移動しながら観測を行った(提供:JAXA)
また、「はやぶさ2」の側面に搭載されている小型モニタカメラ (CAM-H) で機体のサンプラーホーンを撮影した画像も公開された。リュウグウ到着後に機体の一部を「自撮り」した画像が公開されたのはこれが初めてだ。
小型モニタカメラCAM-Hで撮影された「はやぶさ2」のサンプラーホーン(提供:JAXA)
8月6〜7日には「はやぶさ2」の機体を一時的にリュウグウから1400mの距離まで自由落下させる「重力測定降下運用」が行われ、このときの機体の挙動から、リュウグウの質量が約4.5億トンであることが明らかとなった。また、リュウグウ表面での重力加速度の大きさは約0.11〜0.15mm/s2で、赤道での重力の強さは地球の約8万分の1であることもわかった。
「はやぶさ2」ミッションでは、来週9月11〜12日に第1回目の着陸運用「タッチダウン1」の第1回リハーサルが実施される。このときには最有力の着陸候補地点である「L08」エリアに向けて上空約30mまで降下する予定だ。降下の途中で、L08に隣接するバックアップの候補地点「L07」「M04」の撮影も実施し、岩塊の様子などを調べることになっている。
続いて、9月20〜21日には小型ローバー「MINERVA-II-1」2機の分離が行われる予定だ。
記者説明会の録画(提供:JAXA)
(文:中野太郎)
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