南緯45度の星空案内人
第22回 「スキー&ボードと満天の星」

Writer: 米戸実氏

《米戸実プロフィール》

1964年大阪生まれ。子供の時から南半球に興味を持ち始め、ハレー彗星はニューカレドニアへ。卒業後にニュージーランドへ冒険旅行に出て、旅行と南半球にすっかりはまる。両国の旅行会社に勤務し、現在クイーンズタウンでスターウオッチングツアーを運営する傍ら、オーロラ撮影に熱中。

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今では考えられないことですが、若い頃、私は1年間で150日もスキーをしていました。日夜、スキーのことを考え、そして上手くなるためにいろいろな努力を惜しみませんでした。この原稿を私のスキーの師匠が見てくれたら照れるに違いありませんが、彼の一言がなかったら、あのような楽しい時間は過ごせなかったと思います。

プルークと呼ばれる、ターンの後半にやっと両足が揃えられる程度だった私が、2ヵ月でSAJ(全日本スキー連盟)主催の検定試験1級に合格できたくらい「ハマッテ」いました。やはり“継続は力なり”と思いましたが、スキーに関しては単にゲレンデに行くだけでは決して上手くならないと思いました。その日の実践メニューを前の晩までに決めておかなければ、ゲレンデに行っても仕方がない・・・と。

何気なく過ごしている時間も大切だけれど、実践ではイメージトレーニングが何にも増して不可欠なのだと教えてくれました。これは私の財産となっています。イメトレなくしてオーロラの撮影がスムースにはいかないのと同じです。

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今年も私のように一年中滑る事しか考えていない方々が、ニュージーランドに滑りに来られることと思います。季節が逆なので、ニュージーランドはこれから秋、そして6月以降10月までゲレンデがオープンします。

真夏の茹だるような暑さの中、日本から南半球へ来ると、スキーやスノーボードを楽しめます。そして、天の川の一番濃い所が天頂に架かる時季でもあります。

天の川の一番濃い所は、さそり座といて座の間にあって、ここでは真っ白な星雲のようにも見えます。大小のマゼラン星雲もさることながら、この濃い場所はまるで足元を照らすかのように輝いています。

それが天頂、頭の真上にやってくるのです。7等星が見えるのではないか・・・と思わせるような、天然のプラネタリウムがそこにあります。残念ながら、日本ではこの一番濃い所は地平線近くを通りますので、大気減光(大気の影響で星の見かけの明るさが暗くなる)などのため、すっきりとした写真を撮ったという記憶がありません。

しかし、「そこは冬だし、緯度が45度もあるから、気温も低くて、雪嵐なんか毎日なんでしょ。スキー場も近くにあるみたいだし・・・」と思っている方が少なくないでしょう。ご安心ください。ここは確かに南緯45度の地点にありますが、地べたに積雪はほとんどありません。あったとしても年間に2、3日だけ。タイヤチェーンなど10年に一度程度で、山の中腹より上だけが雪化粧するだけです。気温は真冬で平均最高気温が10度前後で、夜間は0度前後です。私が生まれ育った大阪の方が寒いと思います。多くの方が勘違いをされていると思いますので、ニュージーランドの政府観光局に代わって宣伝しておきます(笑)。

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さて、その気になるゲレンデは標高1000〜2200メートルの間にあり、クイーンズタウン周辺には4つのスキー場があります。一番近いコロネットピーク・スキー場には、街の中心地から車で20分前後で行くことができます。たいへん近いですね。私は5年前の滑走中の怪我でスキーから遠ざかっていて、山に行くのはオーロラが出現した時だけになってしまいましたが・・・。

金曜日と土曜日はナイトスキーが楽しめますが、時々照明を避けて南の空にも注目していただきたいです。もし、滑走中にオーロラの出現を確認された時には、当社までご一報ください。もれなく、私の写真集「オーロラと南十字星」を差し上げます(笑)。えっ、どの方向にオーロラが見えるのかわからないって?そりゃごもっともです。やはり当社のツアーにご参加いただいた方がいいかと・・・。

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なお、照明は日本のナイタースキーと比べるとやや暗めなので、ゴーグルのレンズを透明か薄い黄色などに交換しておいてください。また夜間は冷えますので、かなり暖かい服装をご用意ください。

いきなり、ナイタースキーから始まりましたが、メインはもちろん昼間の滑走です。やはり雪が降ったばかりの数日間は最高です。私が元気だったころ(6年前当時38歳(笑))は、1日で40本も滑ったことがあります。そのゲレンデこそが、私が贔屓にしているカードローナというスキー場です。

昨年から、そのメインゲレンデであるキャプテンズ・ベイスンに高速リフトが架かり、旧リフトで8分かかった乗車時間が半分になったと聞きました。もし元気なら、1日に100本は滑れるのではないでしょうか?ただし、休憩はトイレだけで、食事はリフトの上でおにぎりかサンドイッチでも食べてください。私は毎回そうしていましたが・・・、やはり無理ですよね。

ゲレンデの特徴としては全体的に1本の滑走距離は短く、最長で3キロ程度だと思います。平均で2キロだと思ってください。それを繰り返し滑ります。ゲレンデの規模はさほど大きくはありませんが、日本と違ってコースがあってないようなもので、ほぼ全面を滑ることができます。滑走スタイルにもよりますが、かなり広く感じられる方も多いのではないでしょうか?

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このようなゲレンデが皆さんをお待ちしております。今はまだ春爛漫の日本ですが、あと2ヶ月もたてば、うだるような暑さにまっしぐらです。この写真を見て、皆さんは我慢できますか?もしダメでしたら、早速旅行会社に立ち寄って、真夏のスキーツアーのパンフレットを集めてきてください。4つのスキー場を日替わりで滑り、夕食も和洋中華、インド、イタリア、タイ、メキシコ、シーフード、ハンバーガーなど、大抵のものは食べられます。その後はスカっと、「満天」の星空で感動を味わってください。

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さて、そのスキー&ボードツアー in ニュージーランドですが、クイーンズタウン周辺でゲレンデが一番早く営業を開始するのはコロネットピーク・スキー場です。営業開始は通常6月の初旬です。最初は人口降雪機による雪がメインになりますが、我慢できず早めに来たい方や長期滞在で滑走したい方には、かなり助かるスキー場です。

その他の3つのスキー場は、申し合わせているかのように、6月下旬に営業を開始します。天然の降雪を待ってからです。それから長い季節だと10月末まで、通常は10月初旬まで滑ることができます。

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レンタルは揃っていますが、希望メーカーの板やボードがあるとは限りません。こだわる方は自分の板がベストです。ここ数年ニュージーランド航空では、板、ブーツ、ストックの3点セットか、ボード、ブーツの組み合わせをお持ちの方に、エコノミークラスでも“荷物の重量上限30キロまでOK”というサービスを行っています。これで、荷物の重量に関する心配がなくなると思います。しかし、他の航空機会社で来られる方はこの範囲ではありませんので、荷物の重さを規定以内(20キロだったり、23キロだったり)に抑えないと超過料金を取られますのでご注意ください。

ゲレンデへはバスや車で出かけます。残念ながら、ゲレンデに宿泊施設はないと思ってください。カードローナ・スキー場だけ宿泊施設がありますが、買い物などは結局街まで出向かなければならず、食事も自炊になります。普通は市内宿泊先に滞在し、4つのスキー場へ向かうスキーシャトルバスに乗車します。新雪が降った後などはヘリコプターをリフト代わりに使うヘリコプタースキーにもぜひ挑戦してみてください。

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そして、滑走後には美味しい夕食を食べて、その夜に満天の星を見に行くという行程はいかがですか?しつこいようですが、この街に来たからには、夜空とボブズヒルという丘にゴンドラで登って見る景色をぜひ見てください。なにしろ、旅行に関するあるアンケートで、「ニュージーランドに行ったら、してみたいこと」をたずねたところ、75%以上の人が“スターウォッチング”という項目に丸印を付けたと聞いています。

街中のネオンがたくさんある中で星を見ても仕方ありません。当社のツアーに参加していただければ、郊外の真っ暗な場所にお連れします。ぜひ信じられないほどの満天の星をご堪能ください。先月も3月21日と24日のツアー中に、オーロラが出現しました。皆さんもいかがですか?それではゲレンデと満天の星の下で会いしましょう!

次回は「7等星が見える?クイーンズタウンへは」と題した内容をお送りします。

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