南緯45度の星空案内人
第7回 「狙え!極彩色オーロラ」

Writer: 米戸実氏

《米戸実プロフィール》

1964年大阪生まれ。子供の時から南半球に興味を持ち始め、ハレー彗星はニューカレドニアへ。卒業後にニュージーランドへ冒険旅行に出て、旅行と南半球にすっかりはまる。両国の旅行会社に勤務し、現在クイーンズタウンでスターウオッチングツアーを運営する傍ら、オーロラ撮影に熱中。

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今回は、素晴らしいオーロラの出現をもっとも好条件で写真に収めたいと思われる方に、私が体験してきたオーロラの撮影方法をお教えしようと思います。

全ては事前の予習、シミュレーションをいかに積むかにかかってきます。まるで「白い巨塔」で唐沢寿明さんが演じる財前五郎医師が病院の屋上に昇り、手を動かして手術のイメージトレーニングをしているかの如く(ナンノコッチャ)、早い話、目の前に突然オーロラが出現しても、落ち着いて撮影が出来るように準備を怠らないで欲しいという事です。また北半球のオーロラはマイナス何十度という極寒で撮影しなければなりません。

まず、その準備からお話しましょう。まずはオーロラの撮影に必要な機材からです。カメラ、レンズ、フィルム、三脚、レリーズ。これらは最低限必要なものだと思います。「えっ、今どきフィルムなんてやめてよ。時代はデジタルよ」とのご意見もあると思いますが、ところがドッコイ。デジタルカメラでは赤いオーロラが出現した時に後悔されると思いますよ。そりゃあ、オーロラ帯のど真ん中に位置するカナダやアラスカ、またはスカンジナビアでは、太陽風が地表近くまで進入してくるので白いオーロラ(撮ると緑色)が多々見られます。

この緑色のオーロラに関してはデジタルカメラでも、何ら問題なく満足のいく写真を撮れると思います。しかし、赤いオーロラに関してはデジタルカメラ内部にある特殊フィルターが邪魔をして、赤色を軽減してしまうのです。ちなみに星雲などが発する水素の赤色に関しては8割が除去されてしまい、オーロラの赤に関しても6割が除去されてしまうそうです。

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ここクイーンズタウンで見られるオーロラはほとんどが赤色なので、デジタルカメラでは満足のいく写真が撮れなくなってしまいます。故にフィルムなのです。この写真はフィルムで撮ったものですが、デジタルで撮った方は赤色が紫色になっていました。

ちなみに見た目が白いオーロラは緑色に写りますが、その上に肉眼では見えない赤色オーロラが出現している場合があります。フィルムで撮れば一網打尽でとらえられますが、それが本当のオーロラの色かと言えば、それはウソで、オーロラの偽物写真の出来上がりです。あっそうそう、カメラの予備電池は大量にご用意下さい。ちなみに私のフィルムカメラは電池不要で、マイナス30度でも問題なく作動するとうたわれています。

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次にレンズです。これは直接出来ばえに影響しますので、最も大切なものだと思います。オーロラは確かにカーテンの様に揺らいでいます。これを止めて撮る事が求められます。もしシャッターを長い間開けていると、カーテンが左右に動いてしまい、この様に光の壁の様に写ってしまいます。

早い話、出来るだけ短時間の露出で済ませなければなりません。だから、通称「明るいレンズ」が求められる訳です。さてその明るいレンズですが、大変高価です。レンズの明るさは「F値」で表され、F1.4とかF2.8、あるいはF4.0などのように記されています。数値が低ければ低いほど明るいレンズです。オーロラは大きいので、広角でかつ明るいレンズを選びましょう。

そしてフィルムですが、スライド(ポジ)フィルムがお勧めです。大変綺麗に撮れます。しかし露出にシビアでストライクゾーンも狭く、露出時間を間違えると失敗写真のオンパレードが続きます。そこでネガフィルムも候補に上げて下さい。ストライクゾーンが広く、少しくらいの露出アンダーやオーバーを補ってくれます。

フィルム感度は、目の前にそびえ立っているオーロラの明るさと相談して下さい。そのため感度の違ういろいろなフィルムを持参されるのが得策だと思います。また三脚やレリーズは思いきって上位機種をお使い下さい。安い三脚では安定感も損なわれます。また水準器があると水平を確認出来て便利です。電池もリチウムイオンなら低温でも長持ちするそうです。

それと夜になるとピント合わせも大変ですので、全てのレンズで無限大ピントを昼間のうちに合わせておく事も重要です。またニュージーランドでは考えられない事ですが、マイナス30度前後の中で撮影をするわけですから、カメラ(電池)を暖める、フィルムを巻く時は細心の注意を払ってゆっくりと、撮影後のカメラを急に暖かい部屋に入れないなどの注意も必要です。

次にシャッタースピードですが、オーロラの明るさと相談をしながら決めて下さい。例えば5秒間とか30秒とか。デジタルカメラで撮って適正時間を探るのも手だと思います。これで露出不足の為に撃沈しないで済みます。そうそうフィルムは空港のX線を絶対に避けて下さいね。係員への手渡しでお通り下さいませ。

さていろいろと書きましたが、逆に迷ってしまった方の為に私がお勧めする機材の組み合わせをご紹介しましょう。

1. フィルムで撮る場合

バルブ(シャッターを開けっ放しに出来る)付きカメラで電池が不要な機械式が最適。私の場合は1985年購入のペンタックスLX。フィルムは何と言っても富士フイルム社のスライドフィルムでプロビア400Xでしょうね。レンズは広角で明るいレンズ、例えば20mmレンズでF1.8や24mm・F1.4等が宜しいかと思います。カーテンが流れるのを覚悟で挑むなら、対角魚眼15mm・F2.8なども考えられます。

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2. 一眼デジタルカメラで撮る場合

出来れば高価ですけど、フルサイズが良いですね。レンズはやはり広角で明るいレンズが最適です。またISO感度も出来るだけ小さくして、露出時間も少ない方が良いです。例えばオーロラが明るい時等は、ISO400で露出10秒以内でしょうか。

ただ冒頭でもお話しましたが、赤色オーロラを6割も除去するフィルターが入っているので、覚悟の上でお使い下さい。フルサイズではない一眼デジタルカメラの場合は、焦点距離が1.5倍や1.6倍になってしまい、壮大なオーロラの全体像を撮る事が出来なくなる場合もあるでしょう。レンズは必然的に10-17mm魚眼ズームレンズなどが候補となりますが、開放値がF3.5などと暗くて、結局露出時間が長くなり、オーロラのカーテンを止めて撮る事が難しくなります。感度を上げれば解決しそうですが、ノイズが気になります。

3. コンパクトデジタルカメラで撮る場合

予め夜景モードや星空モードでバルブ撮影が出来るのか確認の上、その使い方をマスターしておきましょう。ISO感度やシャッタースピードをどの様にしたら変更出来るのかなど。私の本業であるスターウォッチングツアーでもコンパクトデジタルカメラで星空を撮ろうと努力される方がいますが、結局長時間露光や感度の設定をされた事がなく、ほとんどの方が現地で玉砕されています。

これから2011年にかけて太陽が活動期の絶頂を迎えます。前回の絶頂期が2000年だったそうですが、大きな黒点の出現やフレア爆発の回数は、その翌年以降に多くなりましたので、今回も2012年、13年・・・と大オーロラが期待出来ます。まだ5年も先ですね。その頃には一眼デジタルカメラも進化し、オーロラの赤色を100%発色してくれる機種が出ていても良いと思います。しかも寒さに強い・・・とか。

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今晩も高速太陽風到来のチャンスです。この時期はこの程度のオーロラしか撮れませんが、それでも大変綺麗です。湯冷めが怖いので、風呂にも入らずにただひたすら到来を待ちます。そしてもし磁場が南向きに変わればオーロラ出現が確約されたも同じこと、スクランブル発進します。

次回は南半球での星空撮影についてお話したいと思います。南半球での望遠鏡極軸合わせは慣れたらとても簡単です。

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