多彩な構造を持つ、惑星が誕生する現場
【2018年6月28日 アルマ望遠鏡】
惑星が誕生する現場である原始惑星系円盤には、隙間や環、塵の分布の偏りや渦巻き腕など様々な構造があることが、これまでの観測から知られている。この構造は、円盤内ででき上がりつつある惑星の重力によって作られるという説が考えられている。他にも、円盤中央部に開いた穴は星からの光によって円盤が蒸発することでできたという考えや、特別な条件の下では円盤の影によって渦巻き模様が現れるはずだという説もあり、長い間議論されてきた。
台湾・中央研究院天文及天文物理研究所および米・アリゾナ大学のRuobing Dongさんたちの研究チームは、おうし座の方向500光年彼方にある若い星「MWC 758」をアルマ望遠鏡で観測した。この星の周囲に広がる円盤には、2013年に行われたすばる望遠鏡による近赤外線観測で、2本の渦巻き腕が発見されている。また、別の望遠鏡による電波観測から、円盤の中央部に大きな穴が開いていることや、円盤部分に2つの塵のかたまりが存在することもわかっていた。
2017年のアルマ望遠鏡による観測では、円盤の中心部に開いている穴は円形ではなく、楕円形をしていることがわかった。円盤の穴は中心星からの光によって円盤が壊されることでできるという考え方もあったが、光は星から対称に出ていくため、楕円形の穴を作ることはできない。さらに、星の位置は楕円の焦点の一つと合致している。「円盤に開いた穴が楕円形をしていて焦点の位置に星があるということは、ケプラーの第一法則に従ったものだといえます。これは、穴が力学的な要因によってできたことを示しています。つまり、惑星の重力によるものである可能性が高いのです」(工学院大学 武藤恭之さん)。
また、すばる望遠鏡で発見された2本の渦巻き腕のうちの1本が、アルマ望遠鏡でも観測された。従来の近赤外線観測だけでは、模様どおりに塵が分布しているのか、あるいは円盤構造の影によって渦巻き腕に見えているだけなのか判別できていなかったが、今回の結果により、実際に渦巻き腕の形に塵が密集していることがはっきりした。近赤外線観測とアルマ望遠鏡の観測で見えた渦巻き腕の位置はわずかにずれており、これは惑星が作り出す「密度波」の理論とも合致する。
「MWC 758はとても珍しい星です。これまでいろいろな原始惑星系円盤で見つかっていた主要な構造がすべて、この一つの星の周りに見えているのです。原始惑星系円盤で惑星がまさに作られているという、もっともまとまった証拠が見つかったといえるでしょう」(中央研究院天文及天文物理研究所 Sheng-yuan Liuさん)。
「若い星を取り巻く円盤にはいろいろな構造が見つかっていますが、いったいどうやって作られたのか。これは、10年以上も天文学者たちを悩ませ続けている謎です。私たちは、MWC 758の円盤に驚くほど豊かな構造があることを見つけました。そしてこの発見は、いろいろな構造の起源について重要な示唆をしてくれます」(Dongさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:多彩な構造を持つ惑星誕生現場 ―若い星MWC 758 の高解像度観測
- The Astrophysical Journal:The Eccentric Cavity, Triple Rings, Two-armed Spirals, and Double Clumps of the MWC 758 Disk 論文
〈関連リンク〉
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