人類史上最も広大で詳細な天の川の電波地図が完成

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長野県の野辺山45m電波望遠鏡を用いた「FUGINプロジェクト」で2014年から2017年にかけて行われた観測から、天の川銀河を高分解能で広範囲にとらえた電波地図が完成した。

【2018年1月26日 国立天文台野辺山宇宙電波観測所国立天文台

天の川はたくさんの星の集まりだが、ガスや塵などに隠されて星が見えない部分がある。こうしたガスや塵は電波で観測が可能だが、大きな望遠鏡の視野は狭く、小さな望遠鏡の分解能は低いため、銀河スケールの大規模な構造から星の誕生に関わる分子雲コアの小規模な構造までを同時にとらえることが困難だった。

そこで始動したのが、大規模かつ最も詳細な天の川の電波地図を作ることを目的とした「風神(FUGIN;FOREST unbiased Galactic plane imaging survey with the Nobeyama 45m telescope)プロジェクト」だ。次世代の研究の土台となるデータを残そうという「野辺山観測所レガシープロジェクト」の一つとして採択された。

同プロジェクトでは、野辺山45m電波望遠鏡に新たに搭載された従来の10倍の観測効率を実現した「FOREST受信機」を用いて、45m電波望遠鏡の視力を生かした観測を行ってきた。国立天文台野辺山宇宙電波観測所の梅本智文さんを中心に、筑波大学、名古屋大学、上越教育大学、鹿児島大学などの研究者で構成された観測チームが、2014年から2017年まで1100時間にわたる観測を実施した。

FUGINプロジェクトの観測領域
野辺山宇宙電波観測所での星景写真とFUGINプロジェクトでの観測領域(銀経10~50度)(撮影:岡部統一)

プロジェクトでは、銀緯±1度以下、銀経10~50度、198~236度の約83%にあたる130平方度の範囲が観測された。観測の角分解能は約20秒角、分子の速度分解能は1.3km/sで、従来の天の川の観測のおよそ3倍の精度となっている。また、12CO、13CO、C18Oといった3つの一酸化炭素同位体分子を同時に観測し、観測した分子ガスの分布や運動の様子だけでなく、温度や密度といった性質なども一挙に調査することが可能だ。

完成した地図は満月520個分に相当する大きさで、天の川銀河全体という大きなスケールから、個々の星の誕生に直結する分子雲コアなどの構造に至る星間物質の構造を調べることができる。

すでに行われた銀経12~22度の範囲のデータの解析からは、これまで認識されていなかった巨大な分子フィラメントが同定されたほか、M17やW51などの星形成領域付近においてもひも状のフィラメント構造が多数存在することが明らかになっており、星の誕生に関する重要な鍵になると考えられている。

FUGINプロジェクトの観測から取得された天の川銀河の3色電波画像など
(上段上)銀経10~50度の3色電波画像。赤:12CO、緑:13CO、青:C18Oの分子からの電波強度。(上段下)上段上と同領域をNASAの宇宙望遠鏡「スピッツァー」でとらえた赤外線画像。(下段上)銀経12~22度の3色電波画像。多数のフィラメント構造がわかる。(下段左下)W51付近の拡大図。(下段右下)M17付近の拡大図(提供:NAOJ/NASA/JPL-Caltech)

このプロジェクトで得られた電波地図は今年6月に公開される予定だ。今後天の川の観測研究の土台となる基礎データとして利用されることで、アルマ望遠鏡などによる電波観測だけでなく、赤外線観測などの多波長の観測にも大いに役立ち、さらに多くの新発見がもたらされると期待されている。