急冷化したタイタンのホットスポット

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土星の衛星「タイタン」の南極の上層大気中にあるホットスポットが2012年に急激に寒冷化したのは、大気中の微量ガスの濃縮が原因だった可能性が示された。

【2017年11月29日 University of Bristol

土星最大の衛星「タイタン」は惑星である水星よりも大きな天体で、太陽系内の衛星としては唯一かなりの大気を持つ。

今年9月に運用が終了した土星探査機「カッシーニ」は、13年以上にわたる探査のなかでタイタンの極域大気の観測も続けてきた。土星やタイタンは約29.5年で太陽を一周しているので、13年という期間はタイタンの「約半年」に相当する。

その観測から、タイタンの南半球における冬の始まりであった2009年に南極域の大気中にホットスポット(高温領域)が予測どおりに発達したものの、2012年にはコールドスポット(低温領域)へと変わってしまい、2015年後半まで摂氏約マイナス150度の低温が続いたことがわかった。2016年から2017年の観測からは、ホットスポットへ戻った可能性がみられている。

カッシーニがとらえたタイタンの南極の渦
2012年6月に「カッシーニ」が48万kmの距離からとらえたタイタンの南極の渦(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

通常、惑星の冬を迎えている極域の高層大気は、沈み込む空気が圧縮され加熱されるため暖かい。タイタンの大気が作りだした極渦が極低温で、モデルの予測と相反するものだったため、研究者たちは困惑した。

英・ブリストル大学のNick Teanbyさんたちの研究チームは、カッシーニが計測したガスの存在量や温度と、加熱と冷却率に関するモデルとを合わせ、微量のガスの濃縮によって著しい冷却が起こり極低温の大気になることを示した。

「地球や金星、火星において大気を冷やす主なメカニズムは、微量のガスである二酸化炭素からの赤外線放射によるものです。一方タイタン上では、大気中で起こる珍しい光化学反応によってエタンやアセチレンといった炭化水素、シアン化水素やシアノアセチレンなどのニトリルが生成され、これらが低温化の主原因となります」(Teanbyさん)。

これらのガスが冬の極域における大気の沈み込みによって濃縮され、大気冷却が起こったのだ。この説明は、2014年にカッシーニがタイタン南極の上空に観測した、奇妙なシアン化水素の氷の雲の存在とも一致する。

「このような効果が見られるのは、太陽系では今のところタイタンだけです。タイタンの大気の化学的性質によってのみ起こり得る現象です。似たような効果は、雲の形成や大気循環が示唆される系外惑星でも起こるかもしれません」(Teanbyさん)。

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