予測より速く土星から遠ざかるタイタン

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探査機カッシーニの観測データから、衛星タイタンが年間11cmの割合で土星から遠ざかっていることがわかった。これは従来の予測の100倍も速い。

【2020年6月15日 NASA JPL

月は1年間に3.8cmずつ地球から遠ざかっている。月の重力の影響で地球の表面がわずかに伸び縮みし、これによって地球の自転にブレーキがかかる一方で、その分のエネルギーが月の公転半径を大きくすることに使われるからだ。

同じことは地球以外の惑星とその衛星にも起こっている。土星最大の衛星であるタイタンもまた年々土星から遠ざかっているのだが、これまで天文学者たちはその割合を少なく見積もりすぎていたらしい。

タイタンと土星
「カッシーニ」が2012年に撮影したタイタンと土星。真横から見た環がタイタンの後ろを横切っており、土星にその影が映っている(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

仏・パリ天文台のValéry Laineyさんたちの研究チームは、2004年から2017年まで土星を周回していた探査機「カッシーニ」から得られたデータで2通りの分析を行い、タイタンが土星から遠ざかるペースを調べた。カッシーニが撮影した画像に写っている恒星の位置を精密に測定してタイタンの位置を追う方法では、タイタンが1年で土星からおよそ11cm遠ざかっていることがわかった。これとは独立に、100回以上に及ぶタイタンへの接近飛行のうち10回について、カッシーニが地球へ送った電波信号の周波数の変化からタイタンの軌道を追跡したところ、同じ結果が得られた。

タイタンが土星から年間約11cmずつ遠ざかっているという分析結果は、従来の予測の100倍も速いペースである。このことは、現在土星から約120万kmの距離に位置しているタイタンが、これまでの予想よりはるかに土星に近い位置で誕生したことを意味する。土星自身が太陽系誕生直後の46億年前に生まれたことはわかっているが、その環や80個以上の衛星たちがいつ形成されたかについては不明な点が多い。「土星系の年齢、衛星がいつ生まれたのかという問題に、新たに重要な手がかりをもたらしてくれる研究結果です」(Laineyさん)。

タイタンが従来の見積もりよりも速く土星から遠ざかっていることは、今回の研究にも参加した米・カリフォルニア工科大学のJim Fullerさんが4年前に発表した理論からも導かれる。

これまで約50年にわたり、衛星が惑星から遠ざかる速度はどれも同じ数式を使って計算されてきた。この理論では、タイタンのように惑星から遠くに位置する衛星は、それだけ惑星との重力による相互作用も弱く、内側の衛星に比べてゆっくりと移動すると考えられていた。一方、Fullerさんの理論では、惑星の振動と衛星の公転の周期が一定の比で固定されることで、遠くにある衛星でも近くの衛星とさほど変わらないペースで外向きに移動することができる。

「今回の観測結果が意味するのは、こうした惑星と衛星との相互作用が従来の予想以上に顕著だということです。土星とタイタン以外の惑星系、さらに太陽系を越えて、系外惑星や連星にも適用できる考えです」(Fullerさん)。

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