土星のA環を整える7つの衛星のチームワーク
【2017年10月20日 Cornell University】
土星の周りにある環は複数の部分に分かれており、A環はそのうち地上から見ることができる部分としては一番外側にある。およそ1万5000kmの幅をもつA環は、何らかの制御する力がないと広がり続けて最終的 には消失してしまうはずであり、これまではA環の外側(土星本体から遠いほう)を公転する衛星「ヤヌス」がその形を制御していると考えられてきた。
米・コーネル大学のRadwan Tajeddineさんたちの研究チームが土星探査機「カッシーニ」の観測データを詳しく調べたところ、A環が整然とその形を保っていられるのはヤヌスだけでなく、A環内部やA環の外側に存在する「パン、アトラス、プロメテウス、パンドラ、エピメテウス、ミマス」を加えた計7つの衛星によるチームワークのおかげであることが明らかになった。
2010年6月にカッシーニがとらえた土星のA環の一部。左端(外側)に近い「キーラーの間隙」には衛星「ダフニス」が、右端(内側)の「エンケの間隙」には衛星「パン」が写っている(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)
「カッシーニの観測によって土星の衛星の質量や環の物理的な特徴について詳しいことがわかり、ヤヌスだけでは環が拡散してしまうのを防げないと結論付けました。7つの衛星は団結して強く働くのです」(Tajeddineさん)。
レコードのように見えるA環には、別々の衛星の共鳴によって作られる密度波が全体にわたって数百も存在している。Tajeddineさんたちはこの密度波を根拠として、複数の衛星の重力の影響により環が拡がる勢いが失われると推測している。
環の形成そのものについては、まだはっきりとわかっていないが、環を閉じ込めておくメカニズムは明らかになった。「衛星が作り出す密度波は見た目に美しいだけでなく、実はA環の閉じ込めに加勢しているのです。これまではヤヌスだけが、A環の拡散を防いでいるという信用を独り占めにしてきたわけですが、他の衛星とっては何とも不公平なことでした」(Tajeddineさん)。
〈参照〉
- Cornell University:To keep Saturn’s A ring contained, its moons stand united
- The Astrophysical Journal Supplement:What Confines the Rings of Saturn? 論文
〈関連リンク〉
- カッシーニ
- 星ナビ.com:2017年10月号 特集「カッシーニ グランドフィナーレ」
- アストロアーツ:
- 【特集】土星を見よう(2017年) 「マメ知識」のセクションに環の構造の説明あり
- 投稿画像ギャラリー:2017年 土星
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