アルマ望遠鏡で探るハッブル・ウルトラディープフィールド

このエントリーをはてなブックマークに追加
ハッブル宇宙望遠鏡が写し出した宇宙の最深部「ハッブル・ウルトラディープフィールド」がアルマ望遠鏡でも観測され、これまで知られていなかった場所と時代に星を作るガスが存在していることが初めて明らかになった。

【2016年9月30日 アルマ望遠鏡

「ハッブル・ウルトラディープフィールド」(以下HUDF)は2003年から2004年にハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した、「ろ座」方向の天球の一角だ。3分角(月の見かけの約10分の1)四方の狭い領域の中に、1万個ほどの銀河が写し出されている。

HUDFで見えているのは可視光線や赤外線・紫外線でとらえた銀河の姿で、星や銀河など高温の天体から放たれる光を観測したものだ。同じ領域を、星の材料となる冷たいガスや塵から放射される電波の波長で観測すると、HSTでは見えなかった天体の姿を調べられる。そこで、アルマ望遠鏡を用いたHUDFの高感度・高解像度の電波観測が行われた。

その結果、これまで知られていなかった場所と時代に星を作るガスが存在していることが初めて明らかになり、銀河形成の「黄金時代」とも言える100億年前の宇宙について理解するための新しい手掛かりが得られた。

「私たちの成果は、重要なブレイクスルーをもたらしました。ハッブル宇宙望遠鏡が可視光線と紫外線で見た遠方宇宙と、アルマ望遠鏡がミリ波で見た遠方宇宙をつなげることが初めて可能になったのです」(英・エジンバラ大学 Jim Dunlopさん)。

アルマ望遠鏡とHSTの観測結果の比較
アルマ望遠鏡とHSTの観測結果の比較。(紫)HSTが観測した銀河、(オレンジ)アルマ望遠鏡が検出した冷たい塵とガスを含む銀河(提供:B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NASA/ESA Hubble)

観測では相補的な2つのデータが取得された。一つは主に塵から出る電波、もう一つは冷たい分子ガスから出る電波で、両方とも星の材料の存在や性質を調べる上で重要な意味を持っている。

分子ガスからの電波は、宇宙膨張による波長のずれ(赤方偏移)を測定できるという点でも重要だ。この情報から天体までの距離(電波が宇宙を旅してきた時間の長さ)を推定できるので、銀河の3次元地図を構築することができる。遠くのものほど昔の姿を見せているので、さまざまな距離にある天体を調べると、時代を遡って銀河の進化の道筋をたどることができるのだ。

HUDFを見通す様子の模式図
HUDFを見通す様子の模式図。左が現在で、右に行くほど遠い(過去の)宇宙を見ていることになる(提供:R. Decarli (MPIA); ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

「アルマ望遠鏡による今回の観測から、過去に行くほど急激に銀河内のガスの量が増えていくことがわかりました。およそ100億年前に宇宙における星形成率が最大であったことの直接の要因と考えられます」(チリ・ディエゴ・ポルタレス大学 Manuel Aravenaさん)。

「HUDFは、HSTの代表的な成果の一つです。アルマ望遠鏡による今後の大規模サーベイ観測の成果を足し合わせることで、この領域に存在する銀河の完全な姿を目にすることができるはずです」(独・マックスプランク天文学研究所 Fabian Walterさん)。

関連記事