天の川銀河内で2番目に大質量のブラックホールの兆候

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天の川銀河の中心核「いて座A*」から約200光年離れた位置にある特異分子雲の電波観測で、その空間構造と運動が太陽の10万倍もの質量を持つコンパクトな重力源の存在で説明できることが示された。天の川銀河の中で2番目に大きな質量のブラックホールかもしれない。

【2016年1月20日 国立天文台

天の川銀河を含む多くの銀河の中心には、太陽の数百万倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールがあると考えられているが、その起源は解明されていない。恒星同士の暴走的合体で形成された「中間質量ブラックホール」がさらに合体し、銀河の中心に大質量のブラックホールが形成されるという説があるものの、これまでに検出された多くの中間質量ブラックホール候補天体の存在は確定的ではない。

慶應義塾大学の岡朋治さんらの研究チームは国立天文台野辺山45m電波望遠鏡と南米チリのASTE(アタカマサブミリ波望遠鏡実験)10m望遠鏡を使って、天の川銀河の中心領域に4つの高励起ガス塊(高温・高密度のガスが集中していると考えられる領域)を発見していた。そのうちの1つに含まれる特異分子雲「CO-0.40-0.22」を野辺山45m電波望遠鏡で詳細に観測し、分子ガスの詳細な空間分布と運動を描き出すことに成功した。

CO-0.40-0.22は楕円状の空間構造をしており、極めて広い速度幅を持ったコンパクトな希薄成分と、やや緩い速度勾配を持つ直径10光年程度の濃密成分から成る。極めて広い速度幅を作り出した原因として、研究チームでは点状重力源による「重力散乱モデル」を提唱した。

このモデルに従うと、特異分子雲の中心には半径0.3光年以下で10万太陽質量の天体が潜んでいることになり、球状星団との比較や対応天体が見られないという状況からブラックホールと考えることができるという。もし本当にブラックホールなら、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール「いて座A*」に次いで、天の川銀河内で2番目に大きい質量を持つブラックホールということになる。

天の川銀河内で2番目に大きなブラックホールの想像図
存在の兆候が発見された天の川銀河内で2番目に大きなブラックホールの想像図(提供:Tomoharu Oka (Keio University))

こうした中間質量ブラックホールが中心核から200光年という比較的近い距離に存在するなら、中心核の超大質量ブラックホールは中間質量ブラックホールの合体で形成され成長するというシナリオを支持する重要な観測的事実となる。また、大型電波望遠鏡を使った星間ガス運動の観測からブラックホールを間接的に検出できる可能性を示したという点でも意義のある研究成果となっている。

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