天の川銀河のバルジに、若い星からできた円盤構造
【2015年11月4日 ヨーロッパ南天天文台】
「VVV(Vista Variables in the Vía Láctea)」は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル観測所にある可視光線・赤外線望遠鏡VISTAを使って天の川銀河の中心部を赤外線で観測するサーベイで、このプロジェクトによって変光星や星団など多くの新天体が発見されている。
チリのカトリカ・デ・チリ大学のIstvan Dékányさんが率いる研究チームでは、VVVサーベイによる2010年から2014年のデータを使って、これまで知られていなかった天の川銀河の構成要素と言える若い星の集まりを発見した。
研究ではまず、655個の「ケフェイド(セファイドなどとも言う)」と呼ばれるタイプの変光星候補が発見された。ケフェイドは周期的に膨張・収縮して数日から数か月のサイクルで明るさが変化し、その周期と真の明るさに一定の関係がある(明るいものほど長い)ことが知られており、真の明るさと見かけの明るさを比べることで距離を正確に推定することができる。
発見された若いケフェイドの位置(赤い点)とわたしたちの太陽の位置(黄色い星マーク)(提供:ESO/Microsoft WorldWide Telescope)
また、ケフェイドには2種類あり、一方は他方よりもはるかに若い。脈動周期が星の年齢と密接に関係していることから、655個のうち35個が若い「古典的ケフェイド」で、しかも1億歳以下であることが明らかになった。「最も若いものは約2500万歳ほどかもしれません」(アンドレス・ベジョ大学 Dante Minnitiさん)。
この若さは、天の川銀河の中心で少なくともここ1億年間に新しい星が継続的に生まれていたことを示す、確固たる証拠と言える。
さらに研究チームではケフェイドの分布図を作成することにより、“バルジに存在する若い星からできた薄い円盤”という、これまで天の川銀河で知られていなかった構造を明らかにした。従来のサーベイは厚い塵の中に埋もれていたために見つかっていなかったが、VISTAの赤外線波長における広視野・高解像度撮像能力のおかげで若い星の存在が明らかにできたのである。
VVVサーベイによって発見されるまでまったく知られていなかった若い星たちが、果たして現在存在している場所で生まれたのか、それとももっと離れた場所で生まれたのか、今後調べる必要がある。星たちの基本的な特徴や進化などを理解することは、天の川銀河の進化の過程などを知るための重要な鍵となるからである。
〈参照〉
- ヨーロッパ南天天文台: VISTA Discovers New Component of Milky Way
- The Astrophysical Journal Letters: The VVV Survey reveals classical Cepheids tracing a young and thin stellar disk across the Galaxy’s bulge 論文
〈関連リンク〉
- ヨーロッパ南天天文台: http://www.eso.org/
- 星ナビ.com:
- 2014年6月号 「天文学の20世紀」にケフェイドの発見者ヘンリエッタ・リービット
- こだわり天文書評: リーヴィット 宇宙を測る方法
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