銀河系中心のケフェイド変光星を世界で初めて発見

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【2011年8月30日 東京大学

日本の研究者ら3か国のチームが、天の川の中心付近にあるケフェイド変光星を世界で初めて発見した。発見されたケフェイド変光星はどれも生まれてから2,500万年程度のもので、銀河の中心で数千万年ごとに起こる星のベビーブームを示唆している。


今回発見された3つのケフェイド変光星の近赤外画像

今回発見された3つのケフェイド変光星の近赤外画像。クリックで拡大(提供:プレスリリース資料より。以下同)

変光周期と発見数の頻度分布図

ケフェイド変光星(セファイド)の周期ごとの発見数分布グラフ。今回発見されたものを赤色の線(個数は右側で参照)、これまでに銀河系の中心以外の領域で発見されたものを黒線(個数は左側で参照)で表している。クリックで拡大

ケフェイド変光星(セファイドとも呼ばれる)とは、一定の周期で明るさを変化させる変光星の一種で、その明るさ(絶対等級)と周期に関連があることから、宇宙での距離を測定する際に便利な天体だ。

またその周期は年齢とも関連があり、若いほど長く、古いほど短くなることもわかっている。

ケフェイド変光星は、銀河系の中心以外のところでは多く見つかっていたが、中心付近はガスやダストが多く光が遮られるため、これまで発見できていなかった。

国立天文台など日本の研究機関とイタリア、南アフリカの国際研究チームは、名古屋大学と国立天文台が南アフリカに建設した口径1.4mのIRSF(赤外線サーベイ施設)望遠鏡と近赤外線3色同時サーベイ用カメラ(SIRIUS)を用い、8年の歳月をかけて銀河系の中心付近を繰り返し観測した。そして、10万個近くの星の中からケフェイド変光星を3個発見することに成功した。

星の明るさから見積もった距離は銀河系中心までの距離とほぼ同じ約2万5000光年であり、世界で初めての、銀河系中心にあるケフェイド変光星の発見であることが確かめられた。発見された変光星の周期はいずれもおよそ20日前後で、この周期から求められる星の年齢はおよそ2,500万歳となる。

周期が5日よりも短い変光星については今回の観測対象外となっているが、それでも周期が5日〜20日のものが発見されなかったことから、それに対応する7,000万年から3,000万年前の間に形成された星は少ない可能性がある。このように、銀河系中心における数千万年前の星形成の歴史を明らかにしたのも、今回が初めてとなる。

数千万年という時間で星形成の活発さが変動する原因はまだはっきりとはわかっていない。理論の研究によると、天の川銀河のように中心に棒状構造を持った銀河の場合、数千万年に一度程度の割合で銀河中心にガスが運ばれるメカニズムが存在することが示唆されている。今回の観測結果と何らかの関連があるのかもしれない。

今回発見された天体を詳しく調べることにより、銀河系中心で星が形成されるメカニズムの解明に一歩近づくことが期待される。