ラヴジョイ彗星、毎秒ワイン500本分のアルコールを放出

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今年初めに明るくなったラヴジョイ彗星(C/2014 Q2)を電波観測したところ、ピーク時に毎秒ワイン500本分ものアルコールを宇宙に放出していることがわかった。酒類に含まれる身近なエタノールが彗星から検出されたのは初めてだ。単糖類の一種であるグリコールアルデヒドや21種類の有機分子も彗星から発見された。

【2015年10月29日 NASA

昨年8月に発見されたラヴジョイ彗星(C/2014 Q2)は今年1月に太陽や地球に接近し、4等台まで明るくなってわたしたちの目を楽しませてくれた。太陽に最接近した1月30日ごろ、スペイン・シエラネバダ山脈のIRAM30m電波望遠鏡によって彗星がマイクロ波で観測された。このころには彗星から毎秒20tの割合で水が放出されていた。

2015年2月12日に撮影されたラヴジョイ彗星(C/2014 Q2)
2015年2月12日に撮影されたラヴジョイ彗星(C/2014 Q2)(提供:Fabrice Noel)

彗星の大気中の分子が太陽光からエネルギーを得ると特定のマイクロ波で輝くので、その波長や強度を調べることにより、どのような種類の分子がどれくらい存在しているかを知ることができる。ラヴジョイ彗星の観測からは、大量のエタノール(エチルアルコール)とグリコールアルデヒド、および21種類の有機分子が発見された。エタノールは酒類に含まれる身近なアルコールだが、彗星から検出されたのは初めてのことだ。

一部の研究者は、彗星の衝突によって生命誕生につながる有機分子が地球にもたらされたと考えている。ラヴジョイ彗星における複雑な有機分子の発見は、そのことを支持するものである。

「約38億年前、地球に最初の海が誕生し始めたころ、多くの彗星や小惑星が地球へ降り注ぐように衝突した時期(後期重爆撃期)がありました。今回私たちは、彗星に複数の炭素原子からなる分子を発見しました。つまり、糖や複雑な有機物質であるアミノ酸などが作られ始めているところを観測したわけです」(NASA Stefanie Milamさん)。

また、今年の7月には、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を探査中の探査機「ロゼッタ」から昨年11月に彗星核へと降りた着陸機「フィラエ」が16種の有機化合物を検出したと発表されている。その中には、アミノ酸や核酸塩基、糖類を作るために重要な役割を果たす物質が含まれていた。

「次のステップは、彗星で発見された有機物質が太陽系を形成する元となった原始的な雲からのものか、それとももっと後、つまり、まだ若かった太陽を取り巻く原子惑星系円盤の中で作られたものかを突き止めることです」(仏・パリ天文台 Dominique Bockelee-Morvanさん)。

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