地球からのプラズマ大気流出、太陽活動との関連を一歩解明

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極風(ポーラーウィンド)と呼ばれる地球の極域からの電離大気流出現象は、太陽活動の変化にはほとんど影響されないことが、人工衛星の観測データから明らかにされた。オーロラや磁気嵐といった現象や惑星の大気流出についての理解を進める研究成果で、系外惑星の研究にも応用が期待される。

【2015年5月28日 名古屋大学

磁場が反対の半球に繋がっていない地球の極付近では、磁力線に沿って電離大気(プラズマ)が宇宙空間に流れ出す、極風(ポーラーウィンド)と呼ばれる過程が起こっている。JAXAの磁気圏観測衛星「あけぼの」の観測データの解析から日照の有無が極風の密度などに影響を与えていることがわかり、様々な極風のモデルが提唱されたが、どれが正しいのかはまだはっきりしていない。

JAXA宇宙科学研究所(元・名古屋大学太陽地球環境研究所)の北村成寿さん、名古屋大学の関華奈子さんらを中心とする研究グループは、地球を極軌道で周回している人工衛星FASTが取得した14年間のプラズマ観測データを使用して、太陽活動の変化は極風の流出量にほとんど影響を与えないことを明らかにした。

極風(ポーラーウィンド)の模式図
極風(ポーラーウィンド)の模式図。極風イオン(図中a)はエネルギーが極めて低く正確な計測が難しいので、流出する高エネルギーの光電子(図中c)を計測してイオンの流出量を推定した。低エネルギーの光電子は約4000kmより高高度に存在する電位差で反射している(出典:名古屋大学プレスリリースより)

太陽活動が活発になると極風プラズマ中の光電子が増加するものの、極風イオンの流出量は変わらなかった。その光電子の流出が極風に影響するという可能性が長く提唱されてきたが、流出量を決定しているのは光電子ではなく、極風の主成分と考えられている水素イオンの生成速度だということが今回の研究で示唆された。光電子はイオン流出の加速に大きく影響している。

地球周囲の磁気圏では、太陽風起源のプラズマと地球起源のプラズマが混ざり合う中で、オーロラや磁気嵐といった様々な現象が起こっている。極風を理解することは、この領域にどのようにプラズマが供給されどのような影響があるのかを理解するうえでの一歩となる。

極風は固有磁場を持った惑星からプラズマが流出する最も基礎的な過程であり、今回得られた知見は、惑星からの大気流出やそれに伴う大気進化についての普遍的な理解にもつながる。太陽系外惑星への応用や、惑星から水が失われる過程の理解にも貢献できるかもしれない。

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