アルマ望遠鏡で8年追跡、形成中の大質量連星系の三次元構造

このエントリーをはてなブックマークに追加
アルマ望遠鏡を用いた8年にわたる観測により、形成中の大質量連星系の三次元構造が明らかになった。連星は同じガス円盤から誕生したのではなく、成長中に近接遭遇して重力的に結びついたとみられる。

【2026年9月15日 アルマ望遠鏡

多くの恒星は2つ以上の星が互いに重力で結ばれた連星系として誕生する。多くの大質量星も例外ではなく連星系を成しているが、大質量連星がどのように形成されるのかは、まだよく理解されていない。連星系の形成やその後の進化を知るには、形成初期にある連星系の軌道構造(軌道アーキテクチャ)が手がかりとなるが、そのような3次元構造を直接とらえることは困難だった。

中国・上海交通大学のYao Wangさん、Yichen Zhangさんを中心とする研究チームは以前、アルマ望遠鏡による観測で、とも座の方向約5500光年彼方の大質量星形成領域「IRAS 07299-1651」に存在する、非常に接近した若い連星系を検出していた。

当時の観測結果は、大きなガス円盤の分裂によって近接連星が形成されるとするシナリオの描像と概ね一致したものの、それぞれの原始星を取り巻く円盤は向きが一致していないように見え、そのシナリオでは説明しにくいものだった(参照:「アルマ望遠鏡で観測、大質量連星の誕生現場」)。

大質量連星系IRAS 07299-1651と周囲のガス雲
大質量連星系IRAS 07299-1651と周囲のガス雲(擬似カラー)。囲み内は2つの若い大質量原始星を表す(提供:理化学研究所、ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Zhang et al.

そこで研究チームは、アルマ望遠鏡が持つ高い角分解能と位置決定精度を活用し、8年近くにわたる観測結果をつなぎ合わせて、星の軌道運動を示すわずかな位置変化を明らかにした。さらに、カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)、超大型望遠鏡(VLT)などによる観測結果を組み合わせ、これまでで最も詳細に、形成中の大質量連星系の3次元構造を描き出した。

とくにアルマ望遠鏡では、それぞれの原始星を取り巻くコンパクトな星周円盤までが分解され、原始星の質量や性質に強い制約が与えられた。また、JWSTの観測からは、星から吹き出すジェットの方向が特定された。

IRAS 07299-1651
(背景)JWSTで観測したIRAS 07299-1651領域の中間赤外線画像(擬似カラー)。(円内)アルマ望遠鏡が観測した中心部の連星。星同士は約200天文単位(約300億km)離れている。さらに小さい円は、それぞれの星周円盤とその回転方向(青:近づく方向、赤:遠ざかる方向)、および双極方向に噴き出すジェットの向き(矢印)を表す(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, Joseph DePasquale (STScI), ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Yichen Zhang)

観測の結果、連星の軌道が非常に大きな離心率を持ち、放物線に近いほど細長いことが明らかになった。また、それぞれの星周円盤が互いに大きく傾き、さらに連星の軌道面に対しても大きく傾いていることも判明した。

単一のガス円盤が分裂して2つの星が生まれるとする考え方では、星も円盤もおおむね同じ向きを持つと考えられ、今回の結果を説明することは難しい。一方、2つの星が独立して形成された後、互いに近づいて重力によって結びつき、連星になったとする「コア合体(core-merger)」シナリオであれば、今回得られた3次元構造は自然に説明できる。コア合体シナリオが、離心率の大きな大質量連星を形成する経路の一つである可能性を示す成果だ。

形成途中にある近接大質量連星の想像図
形成途中にある近接大質量連星の想像図。それぞれの星を取り巻く円盤の角度が互いに傾いている(提供:Yichen Zhang)

今回の長期間にわたる高精度観測は、従来困難だった、分子雲に埋もれた連星系の3次元構造が測定可能になるという有力な観測的アプローチも示している。今後も同様の手法で若い大質量連星を多数観測することで、大質量連星の形成の理解が進むと期待される。

関連記事