トリトンによる恒星食、国内3地点で観測成功!
【2022年10月20日 星ナビ編集部】
海王星の衛星トリトンは大気を持つ天体で、研究対象として重視されてきた。その研究手法としては探査機を送らない限り、恒星食の観測が最も有効である。しかし、海王星の動きは遅いために好条件の恒星食は極めてまれだ。
10月6日(木)に起こると予報された今回の現象は、2017年以来の絶好のチャンスだった。全地球的に見て日本は観測に適しており、PSI/MIT(※)チーム(リーダー:アマンダ・シッカフォース氏)からは、りくべつ宇宙地球科学館(北海道陸別町)と仙台市天文台(宮城県仙台市)に研究者が派遣された。これらの地域は予報星食帯の中心に近いためである。また、全国の公開天文台やアマチュア観測者にも観測が呼びかけられ、全国で30地点を超える観測サイトが現象の瞬間を待ち構えた。
※PSI:米・惑星科学研究所(Planetary Science Institute)/MIT:米・マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)。
しかし、当日の天候は下り坂。現象時刻のころ、東北地方以南は無情にも雲に覆われた。そのような状況のなか、北海道の3地点、りくべつ宇宙地球科学館、吉田秀敏さん(札幌市)、三田宏幸さん(音更町)では観測結果が得られ、りくべつと吉田さんは食の減光から復光までとらえることに成功した。さらに、観測上最も重要なセントラルフラッシュ(※)も記録された。これは、食がほぼ星食帯の中央付近で起きたことを示す現象で、このふるまいを詳細に分析すると、トリトン大気の分布や密度を推定することができる。
※セントラルフラッシュ:星食の中心で光度が増す現象。隠す天体に大気が存在するときに見られる。
シッカフォース氏らは、日本の献身的な協力体制に感謝の言葉を述べた。陸別入りしたボッシュ博士は「多くのサイトでは天候に恵まれなかったが、私たちは同じ科学の目的のために協力したという事実が重要です」と語った。PSI/MITチームにより、観測成果からさらに多くの事実が引き出されることに期待したい。
※「星ナビ」2022年12月号で報告記事を掲載します。
〈関連リンク〉
- 「星ナビ」2022年10月号 「トリトンによる恒星食」 早水勉さんによる解説記事
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