低温星のハビタブルゾーンで地球型惑星を発見
【2022年9月13日 東京大学大学院総合文化研究科】
新たに惑星が見つかったLP 890-9は、エリダヌス座の方向約104光年の距離にある暗い恒星で、表面温度は摂氏約2600度と太陽よりも低温だ。このような低温の恒星に地球型惑星が存在すれば、詳しく分析しやすいと期待される一方、恒星が暗すぎるせいで検出すること自体がまず難しい。表面温度が摂氏3000度以下の恒星は数多いが、その中で惑星が見つかったものはこれまで5個しかなかった。
見つかった惑星のうち、内側を回るLP 890-9 bの半径は地球の約1.32倍で、外側のLP 890-9 cは約1.37倍と見積もられ、いずれも地球のような岩石惑星と考えられる。公転周期はそれぞれ約2.73日および約8.46日で恒星からの距離は近いが、恒星自体が低温であるため、外側のLP 890-9 cは天体の表面に液体の水が存在しうる距離範囲であるハビタブルゾーンの中にいる。
どちらの惑星も、公転するたびに地球から見てLP 890-9の前を通過するトランジットを引き起こしているため見つかった。最初の発見はNASAの系外惑星探査衛星「TESS」によるもので、LP 890-9 bのトランジットによって起こる約2.73日周期の減光を検出している。この情報が公開された後、多色同時撮像カメラ「MuSCAT」を開発した東京大学の成田憲保さんたちの研究チームと、低温星のハビタブルゾーンにある惑星を探すプロジェクトでベルギー・リエージュ大学のMichaël Gillonさんが率いる「SPECULOOS(Search for habitable Planets EClipsing ULtra-cOOl Stars)」のチームがそれぞれ独立に追観測を実施し、減光が惑星LP 890-9 bのトランジットによるものであることが確認された。
さらに、SPECULOOSチームはトランジットを引き起こしている惑星が他にも存在する兆候をとらえ、MuSCATとの協力で公転周期約8.46日のLP 890-9 cの実在を確認した。
低温の恒星では、7つの地球型惑星を持つTRAPPIST-1が注目を集めているが、今回の共同発表を行った2つのチームは、LP 890-9系がTRAPPIST-1に次ぐ有望な研究対象になるのではないかと考えている。今後はトランジットの追観測を重ねることで、LP 890-9 cの大気組成や雲の有無などといった大気の性質を調べられることが期待される。
〈参照〉
- 東京大学大学院総合文化研究科:ハビタブルゾーンにあるスーパーアースを発見
- Astronomy & Astrophysics:Two temperate super-Earths transiting a nearby late-type M dwarf 論文
〈関連リンク〉
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