天の川銀河を違った視点から見ていた岩石惑星
【2021年1月14日 ケック天文台】
これまでに系外惑星が見つかった恒星の大部分は、太陽系と同様に、天の川銀河の薄い円盤の中にある。薄い円盤の部分には星の材料となるガスや塵が集まり、渦巻銀河の腕も存在する。そこから見ると、地球から見えるものと同じような天の川が広がっているはずだ。
さらにこの薄い円盤は「厚い円盤」と呼ばれる、比較的古い星からなる構造に包まれている。厚い円盤に属する恒星の起源についてはよくわかっておらず、別の銀河で誕生して天の川銀河に取り込まれた可能性も、天の川銀河の歴史のなかで最初のころに生まれた可能性もある。
天の川銀河のイラスト。中央の黄色の線が銀河バルジ、オレンジ色の線が薄い円盤、赤い線が厚い円盤をそれぞれ示す。その周囲に球状星団や低金属星がまばらに分布する「銀河ハロー」、その外側に天の川銀河を包むダークマターが自己重力で集まった「ダークハロー」が広がっている。画像クリックで表示拡大(提供:Kaley Brauer, MIT)
ろくぶんぎ座の方向およそ280光年の距離に位置するTOI-561は、その組成や運動から、厚い円盤に属する年齢100億年前後の恒星だと考えられている。NASAの系外惑星探査衛星TESSの観測によってこの星の周りに惑星が存在することが示唆され、米・ハワイ大学天文学研究所のLauren Weissさんたちの研究チームがケック天文台の観測で惑星を確認した。
複数見つかった惑星のうち、TOI-561 bは半径が地球の約1.5倍、質量が地球の約3倍で、地球のような岩石惑星である可能性が高い。厚い円盤に属する恒星を巡る岩石惑星として初めて確認されたものになる。
ただし、地球で1日経過する間にこの惑星は中心星を2周以上してしまうほどの至近距離にあり、表面温度は摂氏約1700度と見積もられている。厚い円盤の中にあるTOI-561 bからは天の川銀河を特別な視点で見て、私たちが知る星空とはかなり異なる光景を目にすることができたかもしれないが、少なくとも私たちの知るような生命はそこに立てなかったはずだ。
TOI-561系の想像図。右上が主星、中心が岩石惑星TOI-561 b。左はTOI-561 bの外側に軌道を持つガス惑星のうちの2つ(提供:W. M. Keck Observatory/Adam Makarenko)
「TOI-561の周りを回るこの岩石惑星は、これまでに発見された岩石惑星としては最も古い部類です。その存在は、約140億年前に宇宙の歴史が始まって以降、岩石惑星が形成され続けていることを示しています」(Weissさん)。
〈参照〉
- W. M. Keck Observagtory:A Rocky Planet Around One of Our Galaxy’s Oldest Stars
- Fundación Galileo Galilei - INAF, Fundación Canaria:An unusually low density ultra-short period super-Earth and three mini Neptunes around the old star TOI-561
- 論文:
〈関連リンク〉
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