シミュレーションで探る地球型惑星形成の条件

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太陽系内の地球型4惑星の形成に関する数値シミュレーション研究により原始惑星系円盤のモデルが調べられ、とくに水星と火星の質量と軌道を再現するような条件に対して示唆が得られた。

【2019年10月21日 近畿大学国立天文台天文シミュレーションプロジェクト

「地球型惑星」である水星、金星、地球、火星は、約46億年前に原始惑星系円盤の中で微惑星が互いに衝突を繰り返すことによって誕生したと考えられている。しかし、地球型惑星の起源と進化については解明されていないことも多い。たとえば、地球の水がいつ、どこからどのようにもたらされたのか、地球に巨大天体が衝突し月ができるきっかけになった「ジャイアント・インパクト」はいつ起こったのか、各惑星の大きさや軌道が何によって決まったのか、といったことだ。

水星、金星、地球、火星
地球型惑星である水星、金星、地球(と月)、火星(提供:近畿大学プレスリリースより、以下同)

これまでに行われてきた地球型惑星の数値シミュレーション研究では、各惑星の軌道と質量が正確には再現できておらず、とくに水星と火星の質量が小さいことの説明は難題とされてきた。

近畿大学のPatryk Sofia Lykawkaさんと国立天文台の伊藤孝士さんは、国立天文台の共同利用計算機を用いて数値シミュレーション研究を行い、現在の太陽系の地球型4惑星を再現するにはどのような条件が必要かを探った。

Lykawkaさんたちは、従来の研究から推定される原始惑星系円盤の姿をもとに540種類の初期条件を設定し、それぞれについて微惑星が集積して惑星が形成される様子をシミュレーションした。このうち、4つの惑星類似天体が作られたのはわずか17モデルしかなかった。

次に、計算で形成された惑星の軌道と質量の分析から、現状の地球型4惑星の姿となる原始惑星系円盤がどのようなものかを調べられた。惑星円盤のモデルの一つとして、太陽系形成の初期に木星が内部太陽系へと移動したとする「グランド・タック」と呼ばれる仮説に基づく幅の狭い円盤があるが、このモデルの場合は惑星同士が近すぎたり水星と火星の質量が大きくなりすぎたりするという結果となる、つまり現状の地球型惑星を再現しないことが明らかになった。円盤に質量が一様に分布する古典的なモデルでも、水星と火星の質量が大きくなりすぎ、現状と合わない。

原始惑星系円盤モデルとシミュレーション結果
3つの原始惑星系円盤モデルと、それらをもとにしたシミュレーション結果

今回の結果からは、原始惑星系円盤が次のような条件であれば、現在のような地球型4惑星が形成されると示唆される。

  1. 円盤の質量は、現在の太陽系において金星と地球が存在する狭い領域に集中する。
  2. 円盤は、現在の水星軌道の辺りに内側の境界を持ち、水星軌道から金星軌道にかけて質量密度が増加する。
  3. 現在の地球軌道付近より外側にも質量が存在し、その部分では円盤の質量密度が低下する。
  4. 円盤に対して重力的な摂動を与える木星と土星の軌道は、無視できない離心率を持つ。

地球型4惑星が形成されるための円盤が満たすべき条件がおおまかに明らかになったものの、より具体的で定量的な円盤の特徴が解明されたとは言えない。とくに、金星と地球から離れた軌道を持つ小質量の水星と火星の同時形成を再現するような円盤の初期モデルはまだなく、理論モデルの構築と新たな数値シミュレーションが必要とされる。地球型4惑星の軌道と質量を再現できれば、惑星の力学的・地質学的進化、さらに水と有機物質の起源といった問題の解決に近づくと期待される。