66億光年彼方で発生した中性子星合体のシグナル

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66億光年彼方の銀河で発生したX線バーストが、天文衛星「チャンドラ」でとらえられた。中性子星同士の合体により、強力な磁場を持つ「マグネター」が形成された現象に伴うものとみられている。

【2019年4月23日 Chandra X-ray Observatory

ろ座の一角にある「南のチャンドラ・ディープ・フィールド」(以下「CDF-S」)は、NASAのX線天文衛星「チャンドラ」が12週間にわたって観測を行った領域で、X線による撮像対象としては最も深く(暗い天体まで)調べられた空域である。

2015年3月22日の観測で、CDF-SにX線バーストがとらえられていた。66億光年彼方の銀河で発生したとみられるこの現象では、30分ほどX線が強い状態が続いた後で徐々に暗くなっていき、発生から7時間後にはX線強度が300分の1未満になって検出できなくなった。

X線バーストの変化の様子
X線バーストの変化の様子。全体像はハッブル宇宙望遠鏡によるもので、四角の左上にある天体が、X線バーストが発生した66億光年彼方の銀河とみられている(提供:X-ray: NASA/CXC/Uni. of Science and Technology of China/Y. Xue et al; Optical: NASA/STScI)

中国科学技術大学のYongquan Xueさんたちの研究チームが観測データと理論予測とを比較したところ、このX線バーストは中性子星同士の合体現象に伴うものらしいことが示された。

中性子星同士が合体すると、X線やガンマ線を放射する高エネルギー粒子の双極ジェットが発生する。このジェットが地球の方向を向いている場合はガンマ線バーストとして検出されることがあるので、中性子星同士の合体が起こったことがわかる。しかし、ジェットが地球の方向を向いていない場合、合体の確認には別のシグナルが必要となる。今回の現象はまさに後者のケースを調べる絶好の機会であり、ガンマ線バーストが見られない場合にX線がどう観測されるかという予測を確かめることができたのだ。

研究チームではX線データの特徴から、中性子星同士の合体によってブラックホールではなく、「マグネター」と呼ばれるより大きな中性子星が形成されたと考えている。マグネターは1秒間に数百回という高速で自転し、地球の1000兆倍という極めて強力な磁場を持つ天体だ。X線を放射してエネルギーを失い、暗くなっていきながら自転速度が遅くなったとみられている。

中性子星同士の合体を検出する方法としてはガンマ線バーストや重力波の観測があるが、今回の研究成果によりX線バーストも利用できることが示された。

中性子星同士の合体によるX線バースト発生の解説動画(提供:Chandra X-ray Observatory)

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