新星の爆発初期段階の変化を詳細に観測

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京都産業大学神山天文台により、通常の撮像観測ではとらえられない新星の爆発直後の様子が「高分散・線偏光分光観測」という手法で観測され、新星爆発初期の詳しい状況が世界で初めて明らかになった。

【2019年2月28日 京都産業大学

新星爆発は、太陽程度の質量を持つ地球サイズの高密度天体、白色矮星で生じる爆発現象である。白色矮星が普通の恒星と連星をなしており、特に2つの星の距離が非常に近い近接連星の場合、普通の恒星からガスが白色矮星の表面に降り積もっていく。このガスが一定量を超えると、白色矮星の表面で爆発的な核融合反応が生じてガスが吹き飛ぶ。

爆発で放出されたガスは大きなサイズにまで広がり、それに伴って新星が明るく見えるようになるが、爆発初期においてはガスの広がりは非常に小さい。そのため、通常の撮像観測では、爆発放出物の空間分布を明らかにすることは不可能だ。

そのような通常の撮像観測ではとらえられない小さな空間スケールの天体構造を観測しようとするのが「高分散・線偏光分光観測」と呼ばれる観測手法だ。この方法では、非常に多くの色について(=光の波長を非常に多くに分けて)、光の波の性質である偏光を測定する。普通の撮像観測では単なる点としてしか写らない天体でも、高分散・線偏光分光観測では天体の空間的な広がりや構造を解明できる。

2013年8月14日、新天体捜索者の板垣公一さんによって、明るい新星「いるか座V339」が発見された(参照:「板垣さん、いるか座に6等級の明るい新星を発見」)。

いるか座V339
いるか座V339。左上は発見1日前、右上は発見画像、下は確認画像(撮影:板垣さん)

京都産業大学の河北秀世さんたちの研究チームは、同大学神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡に取り付けた可視光高分散偏光分光器「VESPolA」を用いて、この新星を爆発翌日から7日間にわたって観測した。VESPolAは神山天文台で開発した非常に特殊な装置であり、可視光線波長の光を8000色に分けて光の直線偏光を測定することができる。

VESPolA
神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡に装着された高分散偏光分光器VESPolA(提供:京都産業大学プレスリリースより、以下同)

観測の結果、新星爆発発生直後の放出物は、ゆっくりと膨張するトーラス状(あるいはドーナツ状)の成分と、後から速い速度で球対称に膨張してくる成分という2成分からできている可能性が強く示唆された。この2つの成分は爆発から2~3日後に衝突を起こし、後から出てきた球対称の膨張成分はトーラスの空いている方向から双極的に吹き出すことになったと考えられる。こうした激しい衝突が起こると、新星からガンマ線など高エネルギーの電磁波が放射されることがわかっており、先行研究とも矛盾しない結果である。

爆発初期の天体の形状
いるか座V339の形状。(左)爆発直後の8月15日には、高速で膨張する球対称な光球面を、低速で膨張するトーラス状のガスが取り巻いていた。(右)爆発から時間が経つと2つの成分は衝突し、速い成分は双極状の構造をとるようになった

今回の成果は世界で初めて、爆発直後からの新星爆発放出物の変化を詳しく明らかにしたものだ。現在ではVESPolAはさらに改良され、20000色を分解し円偏光も測定できるようになっている。研究チームでは今後もVESPolAの能力と特長を活かし、新星爆発の初期における爆発放出物の時間変化を集中的に追っていく予定とのことだ。