かじき座に11等の新星が出現

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6月5日、かじき座に約11等級の新天体が出現した。南アフリカ天文台の反保雄介さんによる分光観測から、古典新星であることが判明している。

【2025年6月9日 高橋進さん/CBAT

かじき座はりゅうこつ座の1等星カノープスの南西に広がる星座です。日本からはほとんど見えませんが、領域内に大マゼラン雲があることで知られていて、南半球で星空を見上げた時には意識せずとも目にしている星座です。

そのかじき座の南東端に、6月5日21時11分(世界時。日本時では6日6時11分)に11.2等の新天体が出現しました。発見したのはブラジルの突発天体捜索チーム(Brazilian Transient Search; BraTS)です。

新星の位置
新星の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

この報を受けて南アフリカ天文台の反保雄介さんが口径1.9m望遠鏡で分光観測を行ったところ、P Cygプロファイルを持つバルマー線とHe I線が検出され、Hα線で約600km/sの青方偏移もみられました。このことから、この新天体は古典新星であることが明らかになりました。

新星のスペクトル
新星のスペクトル(提供:反保さん

また、超新星サーベイを行っているASAS-SN(All-Sky Automated Survey for Supernovae)のグループのデータから、この天体の増光が4日には始まっていたことが明らかにされました。

新星の光度曲線
新星の光度曲線(CBATとASAS-SNの報告から高橋さん作成)

反保さんは激変星を中心とした変光星の観測・研究に活躍されており、これまでにもたくさんの天体のスペクトル確認観測をされています。新天体発見には発見者だけでなく、実在を確認したり、移動や明るさの変化を追ったり、今回のようにスペクトルを調べたりする観測者たちも大きく貢献しています。日本からは見えない新星ですが、多くの方々の活躍、貢献にも思いを巡らせてみてください。

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