火星の「ブルーベリー」の成因を解明

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探査車「オポチュニティ」が火星で発見した、鉄を主成分とする大量の丸い粒「ブルーベリー」の形成メカニズムが、地球上に見られる表面が鉄で覆われた丸い岩塊と同じである可能性が高いことが明らかになった。

【2018年12月12日 名古屋大学

2004年にNASAの探査車「オポチュニティ」によって、火星のメリディアーニ平原の地層中から、鉄を主成分とする青黒っぽい色をした5mmほどの丸い粒が大量に発見された。この粒は色や形状から「ブルーベリー」と呼ばれている。

ブルーベリーと形状や組成が類似する、表面が鉄で覆われた丸い岩塊「球状鉄コンクリーション」は、米国ユタ州の地層にも見られる。類似性が見られる両者の鉄コンクリーションの形成メカニズムがわかれば、火星の環境を知る手がかりになる。

地球と火星に見られる球状鉄コンクリーション
米国ユタ州(左)と火星のメリディアーニ平原の地層中に見られる球状鉄コンクリーション(提供:名古屋大学プレスリリースより、(右)NASA/JPL-Caltech/Cornell University)

名古屋大学博物館の吉田英一さん、高知大学理工学部の長谷川精さんたちの研究グループは、ユタ州で調査を行い、もともと炭酸カルシウム(CaCO3)コンクリーションだったものが、化学反応によって鉄コンクリーションに置き換わったことを解明した。また、モンゴルのゴビ砂漠の地層からも同様の鉄コンクリーションを発見し、同じメカニズムで形成されることを確かめた。

まず、吉田さんたちはユタ州とモンゴルでの調査で、3段階に状態が異なるコンクリーションが存在することを確認した。炭酸カルシウムコンクリーションだけが見られるもの(ステージ1)、炭酸カルシウムの外側に褐鉄鉱(ゲーサイト:FeO(OH))の皮膜が形成されているもの(ステージ2)、炭酸カルシウムが内側にわずかに含まれ、外側に厚い褐鉄鉱の殻が形成されている鉄コンクリーション(ステージ3)だ。

コンクリーションの3ステージ
米国ユタ州(左)、モンゴル・ゴビ砂漠(中)、火星・メリディアーニ平原(右)の地層中に見られる、球状の炭酸カルシウムコンクリーションと鉄コンクリーション。上から順にステージ1、2、3へと段階的に炭酸カルシウムから褐鉄鉱の皮膜に置換していく様子が見られる(提供:名古屋大学プレスリリースより、以下同)

さらに、各ステージのコンクリーションをX線で解析したところ、炭酸カルシウムコンクリーションが段階的に鉄コンクリーションに置き換わったことがわかった。

カルシウムと鉄の濃度分布を示した画像
X線顕微鏡による元素マッピング分析から、カルシウムと鉄の濃度分布を解析した結果。炭酸カルシウムの球状コンクリーションが溶解し、褐鉄鉱の殻を持つ鉄コンクリーションに段階的に変化していく様子がわかる

以上のことから、鉄コンクリーションの形成メカニズムは次のようなものと考えられる。

  1. 地下水の蒸発等によって、炭酸カルシウムコンクリーションが砂漠の地層である赤色砂岩中に形成される(ステージ1)。
  2. 地層中に鉄分を溶かす酸性流体(地下水)が浸透し、炭酸カルシウムコンクリーションの表面で中和反応が起こり、鉄(褐鉄鉱)の被膜が沈殿する(ステージ2)。
  3. 炭酸カルシウムの溶解と鉄の沈殿が続き、鉄の殻と砂岩の内部からなる球状鉄コンクリーションが形成される(ステージ3)。

球状コンクリーションの形成メカニズムの概念図
球状コンクリーションの形成メカニズムの概念図

これまでの火星探査で、太古の火星は厚い二酸化炭素の大気に覆われていたことが示されており、表面には川が流れていたことを示す痕跡が多数見つかっている。厚い二酸化炭素による温室効果で、火星の表層環境は温暖湿潤だったと考えられ、火星では地球と同様に炭酸塩岩の堆積が起こったはずだ。しかし、現在の火星表層には炭酸塩がほとんど見られず、原因不明の謎となっている。

研究グループが今回明らかにしたメカニズムが示すように、ブルーベリーを含めた火星の表面にあった炭酸塩は、酸性の水によって溶けてしまったのかもしれない。そうであれば、火星の鉄コンクリーションであるブルーベリーは約40~32億年前の環境変遷史の遺物ということになり、約37~32億年前に酸性流体が火星表層を覆っていたことを示す地質学的な証拠となる。

NASAが2020年に計画しているミッション「Mars2020」では、火星からのサンプルリターンを目指している。Mars2020によって炭酸塩岩が発見され、その表面に酸化鉄の皮膜が形成されていたり、鉄コンクリーションに置き換わっていたりする様子が確認されれば、今回の研究から示された鉄コンクリーション形成メカニズムの仮説が証明されるかもしれない。

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