火星探査ミッション「エスカペイド」の双子の探査機、打ち上げ成功

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11月14日、NASAの火星探査ミッション「エスカペイド」の双子の探査機が打ち上げられた。約1年間地球を周回した後に火星を目指し、2年後に到着の予定だ。

【2025年11月17日 NASA(1)(2)

日本時間11月14日5時55分、NASAの火星探査ミッション「エスカペイド(ESCAPADE; Escape and Plasma Acceleration and Dynamics Explorers)」の探査機を搭載した米・ブルー・オリジン社の新型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」2号機(NG-2)が、米・フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられた。探査機は無事に分離され、打ち上げは成功した。

ESCAPADEミッションの探査機の打ち上げ
ESCAPADEミッションの双子探査機の打ち上げ。当初は昨秋の打ち上げ予定だった(提供:Blue Origin

エスカペイドの探査機は「ブルー」と「ゴールド」の2機で構成されていて、惑星を周回するものとしては史上初の双子探査機である。太陽風と火星の磁気圏や大気との相互作用をリアルタイムで調べ、その相互作用がどのように火星の大気散逸を駆動するか、太陽風が火星周辺の宇宙天気にどのように関わるかを理解する観測データを集める。「火星周囲の宇宙天気の理解は、将来のミッションのための最優先事項で、極限環境下でのシステムやロボット、何よりも人間の保護に役立ちます」(NASA科学ミッション局副長官 Nicky Foxさん)。

火星探査機「ブルー」と「ゴールド」
双子の火星探査機「ブルー」と「ゴールド」の想像図(提供:Rocket Lab

今後エスカペイドは約1年間地球を周回しながら、探査機としては初めて地球磁気圏尾部(磁気圏が太陽風に押されて伸びた尻尾の部分)の遠方領域を通過して観測を行う。続いて2026年11月に地球フライバイを実施して火星遷移軌道に入り、さらに約10か月間の飛行を経て、2027年9月に火星に到着する。科学観測は2028年6月に開始予定だ。

これまで火星探査機は、燃料を節約するために、地球と火星が最接近する約2年2か月ごとのタイミングに合わせて打ち上げられてきた。今回はむしろ、地球と火星は最も離れている時期だが(次の最接近は2027年1月)、地球を周回してから火星に向かうという軌道であれば、ほぼいつでも打ち上げが可能となる。エスカペイドはこの飛行ルートで火星へ到達する史上初の探査機だ。将来の火星ミッションで同様の軌道を用いれば、より頻繁かつ時間的な制約の少ない探査機の打ち上げや物資の輸送が可能となる。

なお、エスカペイドを所定の軌道へ送り届けたロケット「ニューグレン」は、全長98m、直径7mの再利用型大型ロケットだ。その輸送能力は低軌道へ45t以上もあり、スペースX社のファルコン9ロケットの同軌道への輸送重量22.8tの約2倍を誇る。

今年1月以来となる今回の「ニューグレン」2号機の打ち上げでは、ロケットの1段目であるブースターが大西洋上で待機していた回収船への着陸に初めて成功した。これでブルー・オリジン社は、「ファルコン9」と「ファルコン・ヘビー」の自律着陸に成功しているスペースX社に続き、ロケット回収を実現した世界で2番目の民間企業となった。

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