アルマ望遠鏡で迫る連星系での惑星形成

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アルマ望遠鏡で連星系の周囲の円盤を詳細に観測したところ、ガスがなく塵で構成された三日月形の領域が円盤内に発見された。連星系での惑星形成の可能性に新たな見識を与える成果だ。

【2016年2月18日 NRAO

連星系での惑星の誕生と進化を調べるため、おおかみ座の方向450光年彼方にある「HD 142527」がアルマ望遠鏡で観測された。HD 142527は太陽の2倍の質量を持つ恒星と3分の1の質量を持つ恒星が約16億km離れて回りあっている連星系で、以前の観測から、系の内外にある円盤の構造が詳細に明らかになっている(参照:アストロアーツニュース「星の周りの円盤から惑星に取り込まれるガス流を観測」)。

アルマ望遠鏡による最新の高解像度画像には、連星の周りに広がる幅の広い楕円形の環(円盤)が見られた。中心から円盤の内側までの距離は太陽・地球間の50倍もある。円盤の大半は一酸化炭素などガスでできているが、円盤の約3分の1にあたる弧状の部分には塵が含まれ、そこではガスが著しく欠乏していた。

HD 142527系
HD 142527系の擬似カラー画像。(赤)塵の弧の部分、(青と緑)一酸化炭素の環(提供:Andrea Isella/Rice University; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); ALMA (NRAO/ESO/NAOJ))

三日月形をした塵の雲の存在は、連星系に特有の重力によるものかもしれず、さらに惑星形成の鍵という可能性もある。この領域にガスがないのは、凍りついてしまって塵の粒子の表面で薄い氷の層となったからのようだ。塵の粒子はくっつき合って大きくなり微惑星が作られ、微惑星同士が合体を繰り返して最終的に惑星になると考えられる。

「これまでにも多くの円盤を研究してきましたが、アルマを使ってそれらを再び観測することができます。新たなデータを得るたびに、まるで中身を知らされていないプレゼントの箱を開けるような気分になります」(米・ライス大学 Andrea Isellaさん)。

データを元に描かれたHD 142527系の想像図
データを元に描かれたHD 142527系の想像図(提供:B. Saxton (NRAO/AUI/NSF))