星の周りの円盤から惑星に取り込まれるガス流を観測

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【2013年1月7日 アルマ望遠鏡

南米チリのアルマ望遠鏡により、若い星を取り巻く円盤から惑星が潜む「すきま」に流れ込むガスの流れが見つかった。これは巨大なガス惑星が形成されるときに作られると推測されていた「惑星のへその緒」のようなもので、実際に直接観測されたのは今回が初めてのことだ。


HD 142527周囲の円盤とそのイメージ図

アルマ望遠鏡が撮影したHD 142527(左)とイメージ図。内側の円盤は太陽系の土星の軌道(約15億km)、外側の円盤はさらにその14倍も遠くまで広がっている。クリックで拡大(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/M. Kornmesser (ESO), S. Casassus et al.)

サイモン・カサスス氏(チリ大学)らの国際研究チームが観測したのは、おおかみ座の方向約450光年かなたの若い恒星HD 142527を取り巻く塵やガスの円盤だ。若い星の周囲の円盤は宇宙に浮かぶ雲の中で星が作られた際の「残り物」で、この円盤中で惑星が作られると考えられている。

HD 142527の円盤は、今まさに作られつつある巨大ガス惑星によって作られた「すきま」をはさんで、内側と外側に分かれている。理論研究により外側の円盤からすきまに潜む惑星に取り込まれる「へその緒」のようなガスの流れがあると予測されていたが、この流れが今回初めて、アルマ望遠鏡を用いた観測で直接検出された。

ガスの流れのうち惑星に取り込まれず内側の円盤まで運ばれる量を見積もったところ、内側の円盤の形を保ちながら中心の星にガスを供給するのにちょうどよい量であることがわかった。内側の円盤から中心星HD 142527にガスが供給され続けており、円盤へのガス供給が少なければ円盤が消えてしまうのだ。

さらに、すきまの中の淡いガスも今回初めて見つかった。すきま内で形成されつつある天体が重い伴星(恒星のパートナー)であればガスは残らないはずなので、ガスの存在はこの天体が確かに惑星であるということを示している。

惑星そのものは不透明なガスの流れの中に深く埋もれているため直接観測はできないが、すきまのガスの量から惑星の質量を精密に見積もるなど、周囲のガスを手がかりとして惑星の研究ができる。建設途中のアルマ望遠鏡が今後フルに性能を発揮し、さらに詳細な調査が行われることが期待される。