けんびきょう座AUを取り巻く円盤で謎の高速さざ波現象

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32光年彼方の若い恒星「けんびきょう座AU」を取り囲む巨大な塵円盤に、高速で移動するさざ波のような特徴が発見された。星の活発なフレアと関係があるのではないかとみられている。

【2015年10月14日 ヨーロッパ南天天文台HubbleSite

けんびきょう座AUを取り囲むような巨大な塵円盤を研究すると、どのようにして惑星が形成されるのかに関する貴重な情報が得られる。円盤に塊状の物体があったり円盤のゆがみが見られたりすれば、惑星が存在している可能性がある。

2014年、ヨーロッパ南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡(VLT)のハイコントラスト撮像装置「SPHERE」は、一風変わった円盤のようすをとらえた。「円盤内に、これまで観測されたことのないアーチ状、または波のような、不思議な特徴が見られました」(仏・パリ天文台 Anthony Boccalettiさん)。

波のようなアーチは全部で5つ。それぞれ中心星から異なる距離に位置しており、水面に立つさざ波を思わせる。

Boccalettiさんの研究チームでは、2010年と2011年にハッブル宇宙望遠鏡(HST)がとらえた画像に同様の特徴が見られるかどうかを確認し、時間の経過とともに円盤に見られる特徴が変化してきたこと、さざ波が高速で動いていることを明らかにした。

けんびきょう座AUを取り巻く円盤
(上から)HST(2010年、2011年)、VLTのSPHERE(2014年)が観測した、けんびきょう座AUを取り巻く円盤(図上の棒は、60天文単位を示す)(提供:ESO, NASA & ESA)

「HSTのデータから画像を再加工して、円盤に見られる不思議な特徴のようすを4年さかのぼったところ、アーチが中心星から時速4万kmもの速度で離れ去っていることがわかりました」(スイス・チューリッヒ工科大学 Christian Thalmannさん)。

アーチは中心星から離れているものほど速く動いているようで、5つのうち少なくとも3つは中心星の重力を振り切って脱出できるほど速いとみられている。さざ波を高速化させている何らかのメカニズムがあるのだろう。けんびきょう座AUでは活発にフレアが発生しており、巨大で突発的な爆発が星の表面近くで起こっている。このフレアがアーチに関連しているのかもしれない。

研究チームでは引き続きこの星と円盤をVLTやアルマ望遠鏡などで観測し、円盤で何が起こっているのか明らかにしていく意向だ。

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