わずか172秒で自転する地球接近小惑星

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JAXA宇宙科学研究所と日本スペースガード協会の研究グループが、今月中旬に2個の地球接近小惑星を発見した。その後の追加観測によって、1つは非常に高速で自転していることがわかった。

【2018年3月29日 JAXA宇宙科学研究所JAXA研究開発部門

宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、豪・サイディング・スプリング観測所に設置している口径25cmの望遠鏡によって自動観測されたデータを調布航空宇宙センターに伝送し、小型移動天体を検出できるJAXA開発の高性能画像処理技術を利用して解析を行っている。

日本時間(以下同)3月12日と3月18日の観測データから、新しい地球接近小惑星が2個発見された。日本スペースガード協会(JSGA)、石垣島天文台などによって追観測が行われ、国際天文学連合小惑星センターにより、それぞれ「2018 EZ2」と「2018 FH1」の仮符号が与えられた。

2つの地球接近小惑星のうち12日に発見された2018 EZ2は、発見当初の軌道決定によると、14日11時24分ごろに地球から約21万km(地球から月までの距離の約半分)まで接近していたことがわかった。また18日に発見された2018 FH1は、15日19時ごろに地球から約132万km(地球から月までの距離の約3.5倍)まで接近していた。いずれも現在は地球から遠ざかっている。

「2018 EZ2」の軌道
「2018 EZ2」の軌道(提供:JAXA研究開発部門リリースページより)

JAXA宇宙科学研究所とJSGAの研究グループは、岡山県井原市の観測施設「美星スペースガードセンター」で、発見直後の小惑星が明るくなるタイミングで2018 EZ2を観測した。

2018 EZ2
赤い円で囲まれている天体が2018 EZ2。美星スペースガードセンターにて3月13日23時45分から10秒露出で連続撮像した6枚の画像を合成したもの。視野はおよそ40'×60'(満月の直径の1.3個×2個分)。画像の上が北、左が東(提供:JAXA、撮像JSF/JSGA)

その結果、2018 EZ2がわずか172秒で高速自転していることが明らかになり、この小惑星は高速自転が生み出す遠心力に耐えることができる強い内部構造を持っていることがわかった。また、光度変化の様子から、2018 EZ2は軸比が1.7:1の細長い形状をしていることも推定されている。小惑星の直径はどちらも約20mと推定されており、2013年にロシアに落下したチェリャビンスク隕石とほぼ同じ大きさとみられている。

2018 EZ2の自転に伴う光度変化のグラフ
2018 EZ2の自転に伴う光度変化のグラフ。横軸は1周期(約172秒)に対応。小惑星は形がいびつであるため、自転に伴い太陽光を反射する面積が変化して明るさが増減する(提供:JAXA宇宙科学研究所リリースページより)

今回の観測結果は、地球に近づく小惑星の物理状態を明らかにする手がかりの一つとなる。