地球接近小惑星は予想以上に多様性に富む天体だった

【2010年9月3日 JPL

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーによる100個ほどの地球接近小惑星(NEA)の観測結果から、この種の天体が予想以上に多様であることがわかった。また、いくつかの小さな小惑星の太陽光反射率がおどろくほど高く、表面の年代が若いことも示された。


(「地球近傍小惑星ランデブー・ミッション」で撮影された小惑星「エロス」の画像)

2000年に「地球近傍小惑星ランデブー・ミッション」で撮影された小惑星「エロス」。クリックで拡大(提供:NASA/JHUAPL)

NASAの赤外線天文衛星スピッツァーは、運用開始から約6年後の2009年5月に冷却用の液体ヘリウムを使いきり、現在は高温運用期に入っている。この期間に700個ほどの地球接近小惑星(NEA)を観測する予定で、すでに100個のほどのNEAのデータが得られている。その分析から、この種の天体がこれまで考えられていた以上に多様であることが示された。

研究チームの一員で米・アリゾナ大学のDavid Trilling氏は、「これらの天体がもとあった場所がどんなところなのかがわかります。それは、河床の小石を調べると、その小石がもとあった山について知ることができるようなものです」と話している。

可視光による観測では、暗くて大きい天体と明るく小さな天体は反射する光の量が同じなので区別できない。一方、赤外線の波長による観測では、天体の温度から実際の大きさや組成を正確に知ることができる。大きくて暗い小惑星は小さくて明るいものに比べて太陽光を多く吸収するため、より高温となるからである。

スピッツァーのデータから、いくつかの小さな小惑星の太陽光反射率がおどろくほど高いことがわかった。小惑星の表面は太陽放射にさらされるため、時間の経過とともにより暗くなる。つまり、明るい表面を持つほど、その天体が比較的若い可能性があるのだ。反射率が高いということは、NEAの進化が今も続いていることを意味する。

さらに、今回わかった小惑星の多様性は、この種の天体がさまざな起源を持つことを示唆している。あるものは、火星と木星の間にあるメインベルト(小惑星帯)から、そのほかのものはそれよりもはるかに遠い太陽系の果てからやってきたかもしれない。また、小惑星のもととなる材料(地球も同じ材料からできたとされる)は、太陽系の初期に混ぜ合わされたのかも知れない。

同じく赤外線天文衛星であるNASAWISEも全天サーベイを行いながら、すでに430個のNEAを観測している。そのうち110個がWISEによって新たに発見されたものだ。

今後、スピッツァーとWISEによる観測から、NEAの持つ、より多くの特色が明らかになるだろう。地球上に生命が誕生するもととなった水や有機物がどうやってもたらされたのかに迫る手がかりが得られるかもしれない。

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