地球近傍小惑星ファエトンの姿をレーダーで観測

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アレシボ天文台で地球近傍小惑星「ファエトン」のレーダー観測が行われ、表面の地形や正確な直径などが明らかになった。

【2017年12月27日 アレシボ天文台

小惑星「ファエトン」((3200) Phaethon)は毎年12月中旬に見られるふたご座流星群の母天体とみられている天体だ。小惑星番号を持つが、その正体は揮発成分が枯渇した彗星核であると考えられていて、地球軌道に近づく地球近傍天体としても知られている。

このファエトンが今年12月16日に地球から約1030万km(地球から月までの距離の約27倍)の距離まで接近した。約1.4年周期で公転しているファエトンがここまで地球に近づくのは1974年以来で、次の機会は2093年となる。この接近に合わせ、米自治領プエルトリコにあるアレシボ天文台でレーダーによるファエトンの高解像度観測が行われ、1ピクセルあたり75mという解像度でファエトンのレーダー画像が得られた。

ファエトンのレーダー画像
12月16〜18日に得られたファエトンのレーダー画像。自転1周期分の画像を示す。時系列は左上から右下。ファエトンが反時計回りに自転する様子がわかる。クリックで画像拡大(提供:Arecibo Observatory/NASA/NSF、以下同)

ファエトンのアニメーション
自転するファエトンのアニメーション

観測画像から、ファエトンがほぼ球形に近い形状であることや、赤道付近に数百mにわたる大きな低地または凹地があること、極付近にはっきりとした円形の暗い地形が見られることが明らかになった。また、ファエトンの直径が約6kmであることもわかり、従来推定されていた直径より1kmほど大きいことが確認された。

ファエトンの地形
ファエトンの極付近にある暗い地形(赤い円内)

「今回の観測から、ファエトンはNASAの探査機『オシリス・レックス』の探査目標である小惑星『ベンヌ』((101955) Bennu)に似た形をしていることがわかりました。ただし体積では、ファエトンはベンヌの1000個分もあります」(アレシボ天文台惑星レーダー部門リーダー Patrick Taylorさん)。

今回の結果から、ファエトンは「潜在的に危険な小惑星(Potentially Hazardous Asteroids; PHAs)」に分類されている地球近傍小惑星の中で、直径約7kmの小惑星1999 JM8に次いで2番目に大きい天体となった。こうしたPHAを追跡し特徴を調べる上で、口径305m電波望遠鏡を持つアレシボ天文台の世界一強力なレーダーシステムは、小惑星の大きさや形、自転、表面の特徴や地球に接近する軌道などを正確に決めるのに役立っている。

「アレシボ天文台の望遠鏡の性能は他に類を見ないもので、地球を天体衝突から守る業務にとって重要な施設です。私たちはハリケーン『マリア』がプエルトリコに大きな被害をもたらして以来、施設を復旧・再稼働させる作業に地道に取り組んできました」(アレシボ天文台副台長 Joan Schmelzさん)。

9月20日にプエルトリコに上陸したハリケーン「マリア」は同島に上陸したハリケーンとしては1928年以来最も勢力が強く、全島に歴史的な災害をもたらした。アレシボ天文台の電波望遠鏡も一部被害を受けたが、同天文台はハリケーン通過の数日後には発電機を使って電波天文観測を再開し、また周辺地域の救助活動の拠点ともなった。レーダーには大電力を必要とするため、レーダー観測は天文台の停電が復旧した12月初めの再開となった。プエルトリコでは現在も各地で停電や断水が続いている。

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