深さ300kmにも達する木星の大赤斑
【2017年12月15日 NASA JPL】
大赤斑は木星の南半球に存在する巨大な楕円形の嵐である。半時計周りに回っており、その風速は地球上のどんな嵐よりも強い。1830年代から継続的に観測されてきた巨大な嵐は、おそらく350年以上前から存在してきたと考えられている。
NASAの探査機「ボイジャー」1号と2号が木星をフライバイした1979年には、大赤斑の大きさは地球の2倍もあった。それ以降はどうやら縮小し続けているようで、今年4月の観測ではその幅が約1万6000km(地球直径の1.3倍)になっている。
2017年7月10日に探査機「ジュノー」が撮影した大赤斑をモザイク合成して作られた画像。風の動きに関するモデルを適用して作られた「大赤斑の雲の動き」を再現したアニメーション動画より切り出し(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS/Gerald Eichstadt/Justin Cowart)
その大赤斑の深さについて、探査機「ジュノー」による観測データから、根元が雲頂から約300kmまで大気の中に入り込んでいることが示された。「地球の海に比べて大赤斑の根元が50~100倍も深くまで達し、根元の温度が雲頂に比べて高いことを発見しました。大赤斑の根元が暖かいということは、雲頂で猛烈な風が吹いていることを表しています」(米・カリフォルニア工科学 Andy Ingersollさん)。
木星の大気へ突入し、大赤斑の位置にある上層大気から抜け出すまでの飛行シミュレーション動画。ジュノーが撮影した画像から作成(提供:NASA)
ジュノーはさらに、新しい放射線帯を赤道付近にある大気の真上に検出した。放射線帯には、光速に近い速度で移動する高エネルギーの水素イオン、酸素イオン、硫黄イオンが含まれている。この放射線帯を構成している粒子は、木星の衛星「イオ」と「エウロパ」の周りのガスの中で生成された高エネルギーの中性原子に由来するものとみられており、木星の上層大気との作用で電子が引き剥がされイオンになると考えられている。
「木星は、接近すればするほど謎めいてきます。惑星に近いところに放射線帯を発見するとは思いもしませんでした」(ジュノーの放射線モニタリング調査リーダー Heidi Beckerさん)。
また、木星の相対論的電子によって構成されている放射線帯の内側の縁に高エネルギーの重イオンが集まっている兆候も見つかった。この領域は光速に近い速度で移動する電子が占めている領域だ。高エネルギー重イオンの起源や種類は、まだはっきりとはわかっていない。
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