光の偏りの小ささを観測、中性子星合体で金が作られることを独立に示唆
【2017年10月23日 東北大学】
8月17日、中性子星同士の連星が合体することによって生じた重力波が検出され、日本の研究チームが行った電磁波での追跡観測などから、この現象により金やプラチナ(白金)といった重い元素が大量に合成されたらしいことが明らかにされた(参照:「連星中性子星の合体からの重力波を初検出、電磁波で重力波源を初観測」)。
中性子星合体のイラスト(提供:University of Warwick/Mark Garlick (ESO image))
この現象について東北大学学際科学フロンティア研究所の當真賢二さんたちの研究グループが、光の明るさではなく光の振動方向の偏りを観測したところ、全体の光量に対する偏った光量の割合が約0.5%以下という結果が得られた。
もし、中性子星の合体によって金などの重い元素が作られていなければ、光の偏りが検出されると予想されたが、重い元素が多量にあると偏りは小さくなる。つまり、偏った光量が非常に少なかったという観測結果は、中性子星の合体が重い元素の生成現場であるということと矛盾しないものだ。
光の振動方向の偏りは、光の明るさとは全く別の情報である。中性子星合体の進み方の理論が未だ完全には確定していない中で、2つの独立した観測情報から「中性子星合体で金などの重い元素が大量に生じた」という同じ結論が示唆されたことは非常に重要だ。
光の振動方向の偏りからは、重い元素が合体現象のどの部分で作られ、その部分がどういう形状をしているのかについても知見が得られる。今後、より多くの重力波発生源について光の振動方向の偏りと明るさとを合わせて観測することで、重い元素の生成現場の確定や、中性子星合体現象の詳細なメカニズムの解明につながると期待される。
〈参照〉
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