Ia型超新星のヘリウム核融合反応説を支持する初の観測的証拠

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すばる望遠鏡で観測された爆発直後のIa型超新星のデータ解析から、これまで提案されていた爆発メカニズムの一つによって超新星のふるまいを説明できることが確かめられた。ヘリウム核融合反応説を支持する、初の確固たる観測的証拠である。

【2017年10月12日 すばる望遠鏡東京大学大学院理学系研究科東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構京都大学国立天文台天文シミュレーションプロジェクト

星の一生の最期に起こる超新星爆発にはいくつかのタイプがある。そのうち「Ia型超新星爆発」に分類されるものは、連星系をなしている白色矮星が相手の星から物質を受け取って質量を増やした結果、白色矮星の中心部で激しい核融合が始まり、最終的に星全体が吹き飛ぶ大爆発になると考えられている。

Ia型超新星爆発がどのように始まるかは詳しくわかっていない。その解明のためには爆発の数日以内から超新星を観測する必要があるが、Ia型超新星が起こる頻度は銀河1個あたり100年に1度ほどと極めて稀な現象であるため、爆発直後の超新星を見つけることは困難だった。

東京大学の姜継安さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCを用いた超新星発見システムを開発して観測を行っている。HSCの広い視野を活かした多くの観測と、大量の画像データから超新星をいち早く検出するシステムによって、爆発から数日以内の超新星をリアルタイムに発見できるようになっており、2016年4月に検出された100以上の超新星の中から、爆発して1日以内と推定されるIa型超新星が発見された。

爆発直後のIa型超新星
すばる望遠鏡が撮影した爆発直後のIa型超新星(矢印の先)。(左)2016年4月4日、(右)2016年4月5日(提供:東京大学/国立天文台)

世界各地の望遠鏡で追観測を行って超新星爆発の初期の様子を調べた結果、この超新星は、これまでに観測されてきたIa型超新星の変化から推測されていたよりもずっと早い時期に明るくなっていたことがわかった。

研究チームではこの変化が「白色矮星の表層にあるヘリウムが核融合反応を起こした」結果であると考え、超新星爆発の明るさと色の変化を天文学専用スーパーコンピューター「アテルイ」でシミュレーションしたところ、すばる望遠鏡で観測された爆発最初期の急激な増光と色が説明できることが確かめられた。ヘリウム層における核融合反応ではカルシウムやチタンが合成されると期待されるが、この超新星が最大光度に達したときに撮られたスペクトルにカルシウムやチタンによる吸収線が強く見られたことも、初期の増光がヘリウム核融合反応によるものであることを裏付けている。

初期増光の後、この超新星はIa型超新星としては平均的な明るさの時間変化を示した。これは、ヘリウムの核融合反応がきっかけで衝撃波が白色矮星の中心に向けて伝わり、中心部で炭素の核融合反応が生じて星全体が爆発したと考えることで説明できる。ヘリウム層の爆発がどのように観測に現れるのかを理論的に示し観測で実証した、初めての例となる。

星の中心で核融合反応が始まった直後の想像図
白色矮星の表層にあるヘリウム層で核融合反応が起こり、中心に衝撃波が伝わって炭素の核融合反応が始まった直後の様子を描いた想像図(提供:東京大学)

研究チームでは今後も観測を継続してさらに多くの超新星を検出し、その中からより爆発初期段階の超新星を探し出して、Ia型超新星爆発の始まり方を解明したいと考えている。Ia型超新星は遠方天体までの距離を測定するうえで重要な指標だが、爆発メカニズムの解明によって距離測定の精度が高まり、宇宙全体の歴史や構造の理解が進むことも期待される。