木星のオーロラがもたらす大きな謎
【2017年9月13日 NASA JPL/Juno Mission】
米・ジョンズ・ホプキンズ大学のBarry Maukさんたちの研究チームが、探査機「ジュノー」に搭載された紫外線分光器と高エネルギー粒子検出器の観測データから、木星の磁場に沿った強力な電位の存在を観測した。この電位により電子は木星大気に向かって加速され、最大で40万電子ボルトものエネルギーを得て大気に衝突し、激しいオーロラを発生させる。このエネルギーは地球で観測される最も強いオーロラを発生させるのに必要な量の10~30倍も高い。
「ジュノー」が2016年12月にとらえた木星の北極のオーロラ(提供:NASA/JPL-Caltech/Bertrand Bonfond)
木星のオーロラは太陽系内で最も強力なものであり、電位がオーロラ発生に果たす役割それ自体は不思議ではない。しかし、木星の電位は大きいにも関わらず時折しか観測されないことや、地球とは異なり最も激しいオーロラの発生源ではないことは、研究者を悩ませている。
「木星の最も明るいオーロラは、まだよく知られていない激しい加速プロセスのようなものによって発生します。最新のデータによると、オーロラを発生させるエネルギー密度が高ければ高いほどプロセスは不安定になり、新しい加速プロセスが優勢になります。今後もデータを見守り続ける必要があります」(Maukさん)。
(赤い矢印)ジュノーがオーロラ観測(電子エネルギー計測)を行った経路、(白い矢印)離散オーロラを発生させた電子の加速プロセスの発生を示すデータ、(縦軸)エネルギーの強さ、(横軸)時間経過(提供:NASA/JPL-Caltech/SwRI/Randy Gladstone)
「木星のオーロラ発生領域で観測される最も高いエネルギーは、非常に恐ろしいものです。高エネルギー粒子を知ることは、ジュノーや将来の探査機にとって大きな課題である木星の放射線帯を理解するために役立ちます」(Maukさん)。
さらに、木星のオーロラを引き起こしたり宇宙天気や宇宙環境に影響を及ぼしたりするエネルギーについて知ることは、地球においても役立つ情報となり得る。「今回のデータや地球周辺の衛星の観測結果から、探査機や宇宙飛行士を厳しい宇宙環境から守ることにつながる多くの情報が得られるでしょう」(Maukさん)。
〈参照〉
- NASA JPL:Jupiter’s Auroras Present a Powerful Mystery
- Nature:Discrete and broadband electron acceleration in Jupiter's powerful aurora 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2021/01/08 2021年1月上旬 水星と木星、土星が大接近
- 2020/12/15 2020年12月下旬 木星と土星が大接近
- 2020/12/10 2020年12月17日 細い月と木星、土星が接近
- 2020/12/01 【特集】木星と土星の超大接近(2020年12月)
- 2020/11/19 脈動オーロラの光とともにキラー電子が降ってくる
- 2020/11/12 2020年11月19日 細い月と木星が接近
- 2020/10/15 2020年10月22日 月と木星が接近
- 2020/09/28 彗星でも「オーロラ」が発生する
- 2020/09/16 2020年9月25日 月と木星が接近
- 2020/07/17 2020年7月下旬 明け方の空に全惑星が見える
- 2020/07/07 2020年7月14日 木星がいて座で衝
- 2020/06/26 2020年7月5日 月と木星が接近
- 2020/06/02 2020年6月8日 月と木星が接近
- 2020/05/15 望遠鏡と探査機の連係プレーで木星大気の深部を見通す
- 2020/05/14 2020年5月中旬 木星と土星が接近
- 2020/05/14 【特集】木星とガリレオ衛星(2020年)
- 2020/05/01 2020年5月13日 月と木星、土星が接近
- 2020/04/13 土星の大気はオーロラに加熱されている
- 2020/04/08 2020年4月15日 月と木星が接近
- 2020/03/18 「日本書紀」に記されている日本最古の天文記録は扇形オーロラ