タイタンの「魔法の島」の正体は、窒素の泡かもしれない

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土星の衛星「タイタン」にはメタンやエタンの海や湖が存在している。そこでは時々、窒素の泡がブクブクと発生しているかもしれない。

【2017年3月21日 NASA JPL

地球における水のように、土星の衛星「タイタン」ではメタンの雨が降り、川となって湖や海へと流れている。

タイタンの北極にある湖や海
タイタンの北極にある湖や海。今年2月に「カッシーニ」が撮影(提供:NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)

NASAジェット推進研究所のMichael Malaskaさんたちは実験で、タイタンの凍った表面を再現した。そして、非常に低温のメタン中に窒素が溶けうること、気温や気圧といった周囲の変化に伴ってメタン中の窒素が泡となり抜けていくことを見出した。ちょうど、炭酸水の栓を開けたときのようなイメージだ。

「探査機『カッシーニ』の探査で、タイタンの一部の湖や海ではメタンよりもエタンが多いことがわかっています。私たちの実験で、メタンが豊富な液体をエタンが豊富なものと混ぜると、窒素は液体中に留まりにくく(つまり抜けやすく)なることが示されました」(Malaskaさん)。

実験室で再現された泡の動画。メタンが豊富な液体をエタンと混ぜると、窒素が泡となって噴出する(提供:NASA JPL)

タイタンの季節変化でメタンの海の温度が少し上昇することでも窒素の泡が生じる。この泡立った液体は、将来のロボットによるタイタン探査の問題となるかもしれない。ロボットからの熱によって泡ができ、泳いだり浮かんだりするロボットの安定を保つことが難しくなると予測されるからだ。

タイタンの湖や海で泡立つ窒素は、タイタンに関する未解決の謎の一つ、「魔法の島」と関連がある。カッシーニによるこれまでのタイタン探査で、メタンの海に小さな領域が現れたり消えたり(再出現したり)する様子が見られている。この島のような構造が泡の集まりという可能性もある。

「窒素の溶解性に関する今回の研究のおかげで、泡がタイタンの海の中で形成されることに確信が持てました。実際には予測よりも泡は多いかもしれません」(NASAジェット推進研究所 Jason Hofgartnerさん)。

カッシーニは4月22日、タイタンに127回目の、そして最後となるフライバイ(接近飛行)を行う予定だ。

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