月の起源に新説、小天体が何度か地球に衝突

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月の起源は「原始地球と火星ほどの天体との衝突」とする説が広く受け入れられているが、コンピュータシミュレーションによる研究で「より小さい天体の複数回の衝突」とする新説が発表された。

【2017年1月16日 Weizmann Institute of Science

月の形成過程について現在最も受け入れられているのは「ジャイアント・インパクト(巨大衝突)説」というシナリオだ。原始地球に火星サイズの天体が激しく衝突し、その破片から月が作られたというものである。

このシナリオでは、衝突した天体の大きさや衝突速度、ぶつかる角度などの条件が「現在の月にちょうどいい」ものだったという強い制限がある。言い換えれば、この説に従えば「現在の月は非常に幸運が重なってできた」ということになる。また、衝突天体と地球の化学組成の違いが月に残る、つまり地球と月の組成は異なるはずと考えられるが、月の石の分析などから地球と月はほぼ同一の組成であることがわかっている。

こうした難しい条件や事実を説明するため、イスラエル・ワイツマン科学研究所のRaluca Rufuさんたちの研究チームは「一度の巨大衝突で月が誕生」したのではなく「複数回の小天体の衝突で月が誕生」したという理論に基づいたコンピュータシミュレーションを行った。

新説では、地球の10分の1から100分の1サイズの小天体が地球に衝突し、その破片から小さい月が作られる。形成初期の太陽系には多くの小天体が存在していたので、こうした天体は一度だけではなく何度か地球に衝突し、小さい月も複数作られたはずだ。そしてその小さい月同士が同じ軌道を回るようになれば、衝突して大きくなり、最終的に現在の月ができあがったと考えられる。

これまでの月の起源説と新たに提唱された説の比較動画(提供:Weizmann Institute of Science)

この説であれば、衝突する天体の大きさや速度などに限定的な条件は必要なくなる。また、複数回の衝突では一度の巨大衝突よりも多くの物質が地球から掘り返されることになり、数百万年かけて何度か衝突が繰り返されるうちに地球と小天体の化学組成の違いは平均化されわからなくなるだろう。

「さらなるシミュレーションで、小さい複数の月が合体して一つの月になる過程の解明に挑みます」(共同研究者 Oded Aharonsonさん)。

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