準惑星ケレスに水の氷が存在

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探査機「ドーン」による探査結果から、準惑星ケレスの表面近くに水の氷が存在している証拠が得られた。また、太陽光が決して当たらないクレーター内にも氷があることがわかった。

【2016年12月20日 NASA JPL

NASAの探査機「ドーン」によるこれまでの観測では、準惑星ケレスは暗くクレーターが多い天体で、氷が存在するようには見えなかった。「オッカトル・クレーター」内に明るい光点が存在し目を引いていたが、これは反射率の高い塩であり、氷ではない。

しかし、新たな観測データから、ケレスの地表近くに水の氷が存在していることが示唆された。

米・惑星科学研究所のThomas Prettymanさんたちの研究チームは、ガンマ線・中性子検出器「GRaND」によるデータから、ケレスの中緯度から高緯度にかけての広い範囲で地表近くに水素が豊富に存在していることを明らかにした。この水素はおそらく水の氷という状態で存在し、凍った層というよりはむしろ岩を含む多孔質の混合物になっていると考えられている。質量換算で10%程度が氷のようだ。

ケレスの水素の量を示した図
ケレスの水素の量。(青)水素の多い領域、(赤)少ない領域(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA/PSI)

「ケレスの地表下で氷が数十億年間存続できるという予測を裏付ける結果です。小惑星帯の他の天体でも、表面近くに水の氷が存在するかもしれません」(Prettymanさん)。

小惑星帯から地球にやってきた隕石とケレスとを比べると、ケレスは水素が多く鉄が少ない。ケレス内部で塩を多く含んだ物質が上昇し、濃い粒子が沈んだためと考えられ、ケレス内部の歴史を物語っているのかもしれない。あるいは、ケレスやその構成物質が太陽系内で隕石とは異なる領域で形成されたことを示している可能性もある。


一方、独・マックスプランク研究所のThomas Platzさんたちの研究チームは、ケレスの北半球にあるクレーターの永久影を調べた。永久影は太陽光が決して当たらない領域で、常に摂氏マイナス160度未満という非常に冷たい環境だ。

ケレスの永久影
ケレスのクレーターの一つ。中央付近が永久影になっている(提供:NASA/JPL-Caltech/UCLA/MPS/DLR/IDA)

数百ものクレーターのうち10個に明るい物質があることが発見され、そのうち1つを赤外線マッピング分光計が観測したところ、水の氷の存在が確認された。水の氷はケレスのクレーターに蓄積され得ることを示唆する結果だ。

こうした永久影内の氷は、水星や月でも見つかっている。水星と月の場合、衝突した小天体が氷をもたらしたと考えられているが、ケレスの場合は不明だ。ケレスの暖かい領域から蒸発して寒い極域に降り、氷となった可能性もある。「氷がどのようにクレーター内部にきて、長い間存続し続けてきたのかという点に興味があります。氷の豊富なケレスの地殻からかもしれませんし、宇宙から運ばれてきたのかもしれません」(米・ハワイ大学 Norbert Schorghoferさん)。

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