10月8日から渋谷で、日本文化の心をたどる「月」の美術展

このエントリーをはてなブックマークに追加
古来、信仰の対象として、日や時を刻む暦として、照明として親しまれてきた月。渋谷区立松濤美術館で10月8日から「月 ―夜を彩る清(さや)けき光」が開催される。

【2016年10月7日 渋谷区立松濤美術館

(紹介●前田知絵)

日々うつろい季節を彩る月は、「雪月花」「花鳥風月」という言葉にみるように、日本の美意識を表す代表的な景物だ。この企画展は、仏画から浮世絵、装身具までさまざまな月をテーマに、「名所の月」「文学と月~詩歌・物語・随筆など」「信仰と月」「月と組む」「月の絵師~芳年」「月の意匠~武具・工芸品」「時のあゆみと月 」の全7章、81点で構成される。

和歌「武蔵野は月の入るべき山もなし 草より出でて草にこそ入れ」を絵画化したものとされる「武蔵野図屏風」は、見渡す限りの秋の野原に埋もれるように月を描く。はたしてこれは昇る月なのか、沈む月なのか? 元となった歌や富士山の位置から月没の図という説もあるが、もちろん屏風なので配置によってさまざまな見立てが可能だ。薄明の地平線で輝きを変えていくこの満月を正面に見るとき、背後に沈む(昇る)太陽も同時に感じられるだろう。

武蔵野図屏風

蒔絵の硯箱は月に萩。内側には秋草に露の意匠が施されている。月齢からすると22時ごろだろうか、冷たく湿った夜の匂いが漂ってきそうだ。和歌に詳しい人であればここに恋人(月)を待つ女性(萩)を見るらしい。

萩薄蒔絵硯箱、甲陽猿橋之図

今年は中秋の名月にフラれてしまった人も多いと思うが、旧暦九月の十三夜、十月の十日夜(とおかんや)と、お月見シーズンはまだまだ続く。この機会に絵画の月を眺めてみてはいかがだろうか。どの絵師が見た月も、いま頭上に輝いているものと同じと思うと、改めて不思議でおもしろい。作品ごとの情緒、表現の多様性を楽しみたい。

《月-夜を彩る清けき光》

■ 会場:
渋谷区立松濤美術館(東京都渋谷区松濤)
■ 会期:
2016年10月8日(土)~11月20日(日)
■ 入館料:
一般1000円/大学生800円/高校生・60才以上500円/小・中学生100円
■ ウェブサイト:
月―夜を彩る清けき光
■問い合わせ:
TEL 03-3465-9421

●関連イベント

「月の音楽会」

■ 日時:
2016年10月22日(土) 14:00~
■ 内容:
浄瑠璃、三味線、箏曲/パントマイムなど

記念講演会「絵画に浮かぶ月」

■ 日時:
2016年11月3日(木・祝) 14:00~
■ 講演者:
樋口一貴氏(十文字学園女子大 准教授)

コスモプラネタリウム渋谷 特別上映 「秋の星空と月のお話」

■ 日時:
2016年11月1日(火) 20:45~21:30
■ 場所:
コスモプラネタリウム渋谷(東京都渋谷区桜丘町)
■ 問い合わせ:
TEL 03-3464-3252(渋谷区文化総合センター大和田)

タグ

〈関連リンク〉